はじめに
前回の記事では、OpenClawの概要からセットアップまでを解説しました。今回は「で、何に使えるのか」を一緒に見ていきます。
世界中のコミュニティから活用事例を100件収集し、機械学習(BERTopic)とLLM(Claude Opus 4.6)で分類しました。後半では、筆者が実際に運用している「朝の機会スキャン」の構築手順を紹介します。
この記事でわかること:
OpenClawの活用事例が収束する4つの型
難易度別の代表事例20選と、最初の1本の選び方
筆者が毎朝使っているブリーフィング運用の構築手順(有料パート)
セットアップがまだの方は、前回の記事から始めてください!
https://agi-labo.com/articles/naae4beacee4a
100事例を分析して見えた4つの型
100件の活用事例を2つの方法で分類しました。
機械学習モデル(BERTopic)による分類
100事例のテキストを多言語埋め込みモデル(paraphrase-multilingual-MiniLM-L12-v2)でベクトル化し、BERTopicで教師なしクラスタリングした結果、4つのクラスタが浮かび上がりました。

Claude Opus 4.6による分類
同じ100事例をLLMに分類させると、「何の領域に使うか」という軸で4つに分かれます。

分類から見えた3つのこと
1. 全体の62%が「情報収集→構造化→行動変換」に集中している
マーケティング・リサーチ・教育は100%がこのクラスタに入った。OpenClawの最も多い使われ方は「自分の代わりに調べて、まとめてくれる」機能。
2. 「お金に関するタスク」は初心者でも始めやすい
経済トランザクション型14件のうち、初級が30%。レシート記録、家計簿、航空券トラッカーなど、ROIが明確なタスクが多い。最初の1本に迷ったら、お金に関するものから始めるのは良い選択肢。
3. 上級になるほど「既存パターンに当てはまらない」使い方が増える
上級事例の24%が外れ値(どのクラスタにも属さない)。IoTとの融合、マルチエージェント構成、自律ビジネスなど、既存の分類では捉えきれない領域に広がっている。
機械学習が「エージェントが何をするか」(情報を集める、お金を動かす、生活リズムを作る)という行動パターンで分けたのに対し、人間やLLMは「何の領域か」(日常、ビジネス、開発)で分けた点が興味深い。

代表事例20選
100件の中から、難易度別に代表的な20事例を選出しました。全100件の一覧は記事末尾のスプレッドシートにまとめています。
初級(30分〜数時間で構築可能)
#1 朝のブリーフィング — Twitter/RSS/天気をスキャンし、毎朝Discord/Telegramにサマリーを自動投稿
#2 メールトリアージ — Gmailを30分ごとにスキャン、緊急度分類・返信ドラフト作成・スパムアーカイブ
#5 航空券価格トラッカー — Google Flightsを定期検索し、目標価格以下になったらアラート通知
#10 レシート→スプレッドシート — レシート写真から店名・日付・金額・カテゴリを抽出し経費シートに記録
#12 YouTube動画要約 — 指定チャンネルの新動画を文字起こし・キーインサイト抽出し毎日配信
#13 arXiv論文ウォッチャー — キーワード別に最新論文を収集し、研究課題・手法・知見を構造化
#16 音声ジャーナリング — 1日の音声メモを夜間に文字起こし・構造化し、日記エントリーに整形
中級(半日〜1日で構築可能)
#24 WhatsApp生活統合 — メール・カレンダー・タスク・メモ・検索・リマインダーをWhatsApp一本に統合
#32 Obsidianセマンティック検索 — 5,000件以上のノートを意味ベースで検索可能に(曖昧な質問にも対応)
#34 会議→アクションアイテム — 会議録を要約し、決定事項・担当者・期限を特定しタスク管理ツールに作成
#39 週次ビジネスダッシュボード — GA・Stripe等にブラウザでログイン→スクショ→レポート生成→毎週配信
#54 PRレビュー&マージ判定 — コード変更のdiffをレビューし、提案&マージ可否を返信
#65 Home Assistant自然言語制御 — 「1階の照明全部消して」のような自然言語でスマートホームデバイスを操作
#66 SwitchBot AI Hub — OpenClaw対応スマートホームデバイス。50のチャットアプリから家電を操作
上級(数日〜継続的な構築・運用)
#80 自己修復サーバー「Reef」 — SSH経由で全マシンを管理。クラッシュ再起動・ログローテ・脆弱性チェックを自律実行
#81 マルチエージェント開発パイプライン — プログラマー→レビュアー→テスターを直列接続。LLMにフロー制御をさせない設計
#89 自走ビジネス「Felix」 — $1,000を渡し4日で$3,500売上。Stripe決済・Xマーケティングを自律実行
#95 法律事務所クライアントインテーク — 離婚・親権の質問に自動回答し複雑案件のみ弁護士に転送。対応コール数80%減
#99 マルチチャネルAIカスタマーサービス — WhatsApp/Instagram/Google等100+ APIで24/7顧客対応($0.50/会話)
#100 車の自動価格交渉 — Reddit価格データ調査→ディーラーへウェブフォーム送信→$4,200節約
注目事例3選
① velvet-shark氏: 50日間・20ワークフローの全記録
OpenClawコミュニティで最も参照されている実践記録の1つ。Radek Sienkiewicz氏(@velvet_shark)がClawdbot時代から毎日使い続け、50日間で20のワークフローを構築した記録です。公式ドキュメントのセットアップ動画も彼が制作しています。
朝のブリーフィング(毎朝7時に自動実行)
Twitterのタイムラインをスキャンし、関連度の高いツイートを10件ピックアップ。構造化サマリーをObsidianに書き込み、動画アイデアをバックログに追加し、Discordチャンネルに要約を投稿する。
Obsidianのセマンティック検索
5,000件以上のマークダウンノートを意味ベースで検索可能に。「去年の旅行で泊まったホテルの名前」のような曖昧な検索に対応できる。
e-inkディスプレイへの日替わりAIアート
毎日Wikipediaから「今日は何の日」を取得し、木版画風のモノクロ画像(800x480)を生成してe-inkディスプレイに表示する。
20のワークフローすべてのプロンプトがGitHub Gistで公開されており、コピペでそのまま使えます。

彼の設計思想で参考になるのは「2分で読めるように。10分かかるなら失敗」という出力の基準です。
② 「自分で稼ぐAI」Felix
Nat Eliason氏が行った実験です。
Nat Eliason氏は、OpenClawエージェント「Felix」に約$1,000の予算とツールアクセスを与え、自律的にオンラインビジネスを構築させる実験を行いました。
Felixは以下を自律的に実行しました。
・OpenClawのセットアップ最適化ガイド(PDF)の作成
・Stripeを使った決済ページの構築
・X(Twitter)アカウントの開設とマーケティング
その結果、最初の週で約$3,500の売上を達成、
数週間後には $14,000以上の売上を記録したと報告しています。

AIはStripeダッシュボードを操作し、売上管理まで行っており、Nat氏は「AIがかなりの金額を管理しているので少し心配になるほど」とコメントしています。
関連して、香港大学が開発したClawWorkというベンチマークでは、AIエージェントが$10からスタートし、44業界・220タスクで「自分のトークン代を自分で稼げるか」を検証しています。トップエージェントは時給換算で$2,500超を記録しており、少なくとも上位モデルは $1,500/hr を大きく上回る水準に達しています。

AIが経済活動を自律的にこなせる段階に来ていることがわかります。もちろん、倫理面・法律面の議論はまだこれからです。
③ NanoClaw — セキュリティが気になる人へ
OpenClawの急成長に伴い、セキュリティ上の懸念が顕在化しています。セキュリティ監査では512件の脆弱性(うち8件がクリティカル)が発見され、ClawHub上で341件以上の悪意あるスキルが確認されました。
そこで登場したのが、2026年3月1日にリリースされたNanoClawです。

初週でGitHubスター7,000超を獲得。OpenClaw本体を使い続ける場合でも、Docker/Kubernetes対応が2026.3.1で正式に追加されています。セキュリティを重視するなら、コンテナ内での実行を推奨します。







