2026年3月、AGIラボの「AIエージェント スキル自作ハッカソン 2026」が、2週間の開発期間を経て、渋谷で Demo Day を迎えました。
受賞者インタビュー第2弾でお話を伺ったのは、株式会社ニコー代表取締役の藍野雄一朗さんです。
第一弾では、循環器内科医師で起業家のしまゆずさんに、AI時代の働き方と「スキル自作」という発想の核心を伺いました。第一弾の記事はこちら
今回お話を聞いた藍野さんは、シール印刷を主軸とする製造業の現場社長。AGIラボのハッカソンでは、自社工場のシフト管理の悩みから生まれた AI エージェント、SMC(Shift Management Claw)で第2位を獲得しました。

AIエージェントがコードを書き、資料を作り、日々の仕事から生活に入り込んでいく時代。その変化は、IT企業やエンジニアだけのものではありません。
むしろ、紙、機械、人の判断、急な欠勤、納期、現場の勘が絡み合う製造業の中にこそ、AIが入り込む余地があります。
「AIと人間の境界は、どんどん差がなくなっていく。これを楽しまなければ、もったいない」
そう語る藍野さんは、AIを単なる効率化ツールとしてではなく、現場の仕事や人間の役割そのものを変えていく存在として見ています。
一見、AIとは距離があるように見える製造業の現場で、AIエージェントに何を任せ、何を人間が担うのか。藍野さんがいま見ている「次の仕事」について伺いました。
藍野 雄一朗(AIno)さんプロフィール
株式会社ニコー代表取締役 / 製造業の現場社長 自社工場で、人間しかできなかった仕事を AI に任せ続ける現場社長。AGIラボには初期から参加。「AIエージェント スキル自作ハッカソン 2026」では、自社のシフト組みの痛みから生まれた SMC(Shift Management Claw) で第2位を獲得した。

工場の社長は、ペットショップの少年から始まった
━━ 藍野さん、まず、今やっていることの中で一番楽しいことから教えてください。
私、元々はエンジニアでもないんですよ。Excel職人ってやつで、関数の組み合わせで何か作るぐらいの。
ただ、DIYが昔から好きだったんですよね。だからこのアプリの開発も、デジタルDIYだと思ってやってます。
20年前って、爬虫類用品ってほとんど売っていなかったんですよ。
子供の時からそういうの好きで、ペットショップもやってたんですけど、市販品がないんですよね。温度を整える道具も、棚も、ぴったりのがなかったら自分で作ればいいや、みたいな。
これが今もそのまま続いてるだけなんですよね。
工場内で使うぴったりのアプリがないんだったら、自分で作ればいいよ、って。会計にしろ、出勤管理にしろ、自分で作れば、完全にぴったりにできるじゃないですか。
家のDIYも好きですから。基本的に何でも物を作るのが好きなんです。

━━ なるほど。ペットショップの頃のDIYと、今の開発がつながっているんですね。
そうそう、開発も全くそれと同じだなと思って今やってますね。
ハッカソンが「起爆剤」になった
━━ 今回のハッカソン期間で、印象に残っていることや楽しかったことってありますか?
私、今回のハッカソンまで Claude Code は使ってたんですけど、スキルは使ってなかったんですよ。
スキルって何なのかは、なんとなく分かってました。でも、意識的にスキルで何かしよう、スキル化しよう、という発想までは行ってなかったんです。色々作ってる割には、そこまで目が向いてなかったんですよね。
それが、ハッカソンの提出物がスキルだったじゃないですか。
そこから、もうスキルだなってなったんですよね。実際にやってみたら、うわ、これめっちゃいいじゃんと思って。今は何か作るたびに、「これもスキル化できるんじゃないか」って考えるようになりました。
ハッカソンって、起爆剤としてはやっぱ絶大ですよ。みんな別に無料なんだから、参加すればいいのに、って本当に思いましたよ。参加しないのはもったいない。
━━ そのシフト管理スキルがある前は、実際どうされてたんですか?
そうですね。製造業のシフト管理って、結構大変なんですよ。
機械に対して、100%の人がいないんですよ。今日5つのラインがあったとして、絶対に4つは動かさなきゃいけない、でも人が3人しかいない。そういう時、どうするか、すごい悩むんですよ。納期、工程、作業者の能力、急な欠勤、残業コスト、全部考えて、感覚で組んでいかないといけない。
これ、できる人の頭の中にしかないんですよ。だから属人化しちゃう。やめられちゃったら、大変なことになっちゃう。
━━ そこをAIに任せるとしたら、何が一番いいと思ったんですか?
ただシフトを自動で組むだけには、したくなかったんですよ。
シフトを自動で組むだけじゃなくて、覚えといてね、っていうのも入れたかったんです。あいつと一緒にシフト管理を1年もやったら、自分の中にしかなかったノウハウが、会話形式で AI の中に組み込めていけるんですよ。これは、すごくいいなと思ったんですよね。
人間を雇って、お前1年経ったらシフト管理やるんだぞ、って言って一緒にやって、ようやく任せられるようになったところで辞めちゃう。これって、よくあるんですよ。それも、AIなら解消できると思うんですよね。
製造業ってアナログが多くて、そんなの使えないっていう声もあるんですけど、なかなかいけると思うんですよ。
━━ ちなみに、そういうツール開発っていつやられてるんですか?
日中、会社でやってます。Claude Code にタスクを投げて、待ち時間で他のメールを返していると、気がつくと終わってる。現場がここにあるので、検証もすぐできるんですよ。
Alexa が叫んで、走って戻ったら助かった
━━ 工場の中で、最近これは良かったな、みたいな事例ってありますか?
こないだ、工場のセンサーで紙が切れたら Alexa が騒ぐ、っていうのを作ったんですよ。
事務所を離れて外にいたんですけど、Alexa が騒いで、走って戻ったら助かりました。事故が防げたから、もうこれはいいなと思って、家のAlexaを2個ぐらい解体してきました。これも工場に持っていこうかなって、本気で考えてるんですよ。
Alexa は、可能性に期待してるっていうか、面白がってるっていうか。やっぱり機械と喋るっていうのは、夢の1つなんです。
AI工場長を、会社の真ん中に置きたい
━━ これから、スキルじゃなくてもいいんですけど、AIでやりたいことってありますか?
やりたいのはもう「AI工場長」というか、会社のど真ん中に置いてやりたいんですよね。
うちは結構、スプレッドシートとGmailとGoogleドライブとか、いっぱい使っているので、やりやすいんですよ。明日の送り状、出しておいて、っていうのは、もう全部 AI にやらせたい。ヤマトの人が来た時に、明日何件出るんだっけ、ってAIが答えてくれる。それって最高じゃないですか。
工場の中だってね、AI にやらせたいんですよ、ぶっちゃけ。掃除してないぞ、みたいに。Switchbot の掃除機なので、API を繋げば、今日まだやってないぞ、ってAIのほうで分かるんです。
━━ 周りの人がまだAIを見ていない感じって、何が大きいんだと思いますか?
AIをパソコンのアプリだと思ってる人がほとんどなんですよね。だけど、私はもはや人だと思ってるんです。人と人と人ですよ。
AIはマニュアル(MD)を見て動いてるだけ、ってよく言われるんですよ。でも、私だって、藍野雄一朗っていう存在の上に、ニコーの代表っていうやらなきゃいけないことを被せて動いてる。それと何が違うんですか、って思うんですよね。
そういう話を普通の人にすると、大体変人扱いされるんですけどね(笑)。
5GBで、鳥肌が立ったんです
━━ AGIラボのDiscordコミュニティではローカルLLMの話について藍野さんが一番ワクワクしている感じがします。
ローカルLLMですね。
5GBくらいしかないあのデータの方と、なんかこう、普通に知的な会話ができるって、すげえなって。見た目もやってることも、ChatGPT でやってるのと同じなんですよ。でも、これ、このパソコンの中だけで考えてるんです。
Claude と話してて、向こうが「鳥肌が立ちました、私に肌があればの話ですけど」とか言ってくることがあるんですよ。仕事じゃない話で、空想科学読本みたいなことを本気で話してくれる。人間と話してるのと同じような楽しさを、感じましたね。
学びじゃなくて、発見
━━ 最後に、AIを触る楽しさについて、あらためて聞かせてください。
ハッカソンは、楽しいからやった方がいいよ、っていうのを伝えたいですね。学ぶのなんか、みんなそんな楽しくないんですよね。だから、楽しさを伝えたいんです。
新しい発見がたくさんあるから、絶対やった方が得。やらなきゃ損だと思います。
人間って、どうしても「できることをやろう」としちゃうから、ハッカソンとか勉強会って、すごく大きいんですよ。
楽しかったです、ありがとうございました。
━━ こちらこそありがとうございました!
AGIラボでは、5月に 3つの講座 を開催します。Git、SKILLs、Codex App。藍野さんが第2位を獲ったハッカソンで使われた「スキル」も、5/30のSKILLs講座で扱います。
AGIラボメンバーは、3講座とも無料で受けられます👇

