ChatGPT研究所では、生成AI活用の先進事例を紹介するインタビュー企画を進めています。
今回は、大手企業向けにAIソリューションをフルカスタマイズで開発・提供する株式会社Almondo(アーモンド)のCOO 松本悠秀さんに(取材日:2025年3月26日)、同社のAI活用戦略やAI時代の組織づくりに関する考え方について話を伺いました。


株式会社Almondo 概要
会社名: 株式会社Almondo
設立: 2023年2月
代表者: 代表取締役 伊藤 滉太
所在地: 東京都渋谷区 (WeWork 渋谷スクランブルスクエア内)
事業内容: 大手企業向けAIアルゴリズム・ソリューションのフルカスタマイズ開発。AI活用の課題抽出・戦略コンサルティングから、PoC、開発・システム組み込み、運用・改善までを一気通貫で提供。
2024 年 12 月には、上場 SIer テンダへの “M&A=連邦型統合” を実施。スタートアップの高速 R&D と、エンタープライズ向けの開発力・営業網・運用ノウハウを“組織間 API”のように接続し、要件定義から導入・保守までをワンストップで担える AI×SW×Biz 三層一体の「真のフルスタックカンパニー」 へと進化し、次世代 SI モデルを作り上げてる挑戦を行っています。
URL: https://almondotech.com/
⸺まずはじめに、悠秀さんのご経歴と、Almondoでの現在の役割について教えていただけますか?
悠秀さん:
経歴としては、元々は経済学部で、情報系・エンジニアリングとは特にゆかりはなかったのですが、東京大学在学中に松尾研究室が主催するデータサイエンス講座(GCI)に参加し、そこで優秀賞をいただいたことが大きな転機になりました。それがきっかけでAIやプログラミングに本格的に取り組むようになりました。
その後は株式会社松尾研究所でAIプロジェクトのエンジニアやマネージャーとして経験を積ませていただいたり、エンジニア養成機関の「42 Tokyo」でプログラミングをより基礎から学んだりしました。
Almondoには2023年4月、創業初期に参画し、2024年8月にCOOに就任しました。現在の役割は、CEOの伊藤が描く大きなビジョンや事業の方向性を受け、それを具体的な戦略に落とし込み、チームと共に実行していくことです。事業を前に進めるためのあらゆるオペレーションを見ていますね。
技術はもちろんですが、もともと教育分野にも興味があったこともあり、「人」や「組織」がテクノロジー、特にAIによってどう変わっていくのか、という点に強い関心があります。AIが進化する中で、人に残される本質的な価値とは何なのか、そしてその価値を組織としてどうすれば最大限に引き出し、成長させていけるのか、ということを常に考えています。
⸺株式会社Almondoはどのような事業をされているのでしょうか?
悠秀さん:
Almondoは、主に大手企業様を対象に、お客様それぞれの固有の課題に合わせてAIアルゴリズムやAIソリューションを「フルカスタマイズ」で開発・提供しています。
特徴としては、需要予測のようなデータサイエンス領域から最新の生成AI領域まで、幅広い専門性を持つチームが、お客様のAI活用を技術面から強力にサポートしている点です。
また、設立からわずか1年10ヶ月となる2024年12月(取材時点)には、株式会社テンダ(東証スタンダード:4198)との連邦型統合(M&A)を行い、挑戦の幅を大きく増やして「第二創業期」のフェーズに入りました。
単なるEXITではなく、非連続な成長を目指すための経営戦略と位置づけています。
お客様の状況に最適化されたソリューションを通じて、「テクノロジーで、あらゆる『ひと』の力を解き放つ」というビジョンの実現を目指しています。

AIツール、悠秀さんはどう考え、どう使っている?
⸺新しいAIツールが次々と登場しますが、悠秀さんはどのように向き合っていますか?
悠秀さん:
そうですね、ツールの進化は本当に早いですよね。なので、特定のツールに強く依存するのは少し違うかな、と思っています。
結局、例えば今注目されているツールがあったとしても、常に新しいものが登場してくる、という前提で考えています。
ですから、大事なのは、個々のツールを追いかけることよりも、常に自身の業務プロセスを整理し、どの部分がAIで代替可能かを把握し、その認識をアップデートしていくことだと思います。ツールはあくまでその時々で最適なものを選ぶ、というスタンスです。

⸺なるほど。では、ご自身の業務をどのように整理し、AIをどのように活用されているのか、もう少し詳しく教えていただけますか?
悠秀さん:
僕自身のCOOとしての役割は、大まかに言うと事業戦略の実行なんですが、その業務を「インプット」と「アウトプット」という形で整理して考えています。
インプットは、意思決定や実行のために必要な情報を集めたり学んだりするプロセスです。担当領域の最新情報を追いかけたり、営業や人事といった新しい業務について学んだりすることがこれにあたりますね。
アウトプットは、インプットした情報をもとに具体的なアクションを起こすプロセスで、「意思決定」と「実行」に分けられます。
この整理の中で、それぞれのプロセスでAIをどう使うかを考えています。
⸺具体的に、インプットやアウトプット(実行)の場面では、どのようにAIを使い分けていますか?
悠秀さん:
インプット、つまり情報収集や学習では、AIをかなり活用しています。
担当領域の最新情報を追うときも、普通にPerplexityなどのツールで聞くのもそうですし、もちろん人に聞くのも一つの手と考えています。新しい業務を学ぶときも、概要とかはAIツールで掴んだ後に、DeepResearchでリサーチするといった使い方をします。まずはAIで全体像を掴んで、必要に応じて他の方法と組み合わせる感じですね。
アウトプットの中でも実行のフェーズでは、タスクによって使い分けています。
簡単な資料作成のようなタスクでは、最近「Manus」(マナス) のようなツールも活用していて、例えば、勉強会で使う資料として特定のPDFを読み込ませ、内容を基にした資料を作成してもらう、といった形でAIに実行を任せることもあります。
人に何かを依頼するときは、その依頼内容のたたき台を作るのをLLMに手伝ってもらうこともありますね。
自分でスライドを作る場合は、LLMにバーって書かせて、構成案書かせて、自分で作る、というようにあくまでサポーター的な使い方をします。最近だと、DeepResearchでイベント企画のリサーチから構成案まで作ってもらい、それをMarpなどでスライド化して叩き台を共有する、といったこともやっています。
⸺では、アウトプットの中でも「意思決定」のような、より高度な判断が求められる場面ではいかがでしょうか?
悠秀さん:
意思決定に関しては、AIの役割はまだ限定的だと考えています。
もちろん、判断材料を作らせることはできますが、最終的な判断は自分で行っています。
理由としては、AIにはまだ人の背景、スキルや個性などの完全な共有ができないことや、創造的なアウトプットが難しいという点があります。ですから現状では、意思決定のプロセスにおいては、AIは補助的な役割にとどまる、という認識です。

⸺例えばプロンプトやAIへの情報提供などで工夫されていることはありますか?
悠秀さん:
そうですね、最近特に意識しているのは、ChatGPTやCursorのようなAIツールを使う際に、毎回同じような背景情報(コンテキスト)を入力する手間をどう減らすか、という点です。
そのために、カスタマイズ機能(カスタムインストラクションやRulesなど)を活用して、あらかじめ自分自身やAlmondoに関する情報を整理して設定しておく、というのを試しています。例えば、僕の役割や得意領域、会社の事業内容や価値観などを構造化して定義しておくイメージですね。

まだ検証中の段階で、明確な成果が出ているわけではありませんが、こうすることで、AIがより自分や会社の視点に近いアウトプットを出してくれるようになるのでは、と期待しています。毎回ゼロから説明する手間が省ければ、さらに思考や実行のサイクルを早められるはずです。
⸺AIを活用することで、ご自身の働き方や生産性に変化はありましたか?
悠秀さん:
1タスクのサイクルが早くなったのは間違いないと感じています。感覚的には、タスクにかかる時間が半分くらいになって、その分、人に相談したりAIに何かを頼んだりする回数が増え、結果的に生産性は倍くらいになっているかもしれません。
ただ、楽になったというよりは、サイクル速くなってる分、考えるべきことが増えて業務量が下がってない(笑)というのが正直なところです。AIによって生まれた時間を使って、より多くのことや、より難しい課題に取り組むようになった、ということだと思います。
⸺少し話は変わりますが、キャリアについてもお伺いさせてください。悠秀さんはエンジニアリングの経験もお持ちですが、そこから組織運営へと軸足を移された背景には、どのような考えがあったのでしょうか?
悠秀さん:
当時は42 Tokyoや松尾研究所でソフトウェアやAIエンジニアリングの道を追求するという選択肢もあったのですが、ちょうどAlmondoが急拡大する中で、組織全体を見る役割を打診されたタイミングがありました。そうした自身のキャリアを考える上で、「不可逆性」というのを少し意識していました。
例えば、その組織を見る役割を打診された時、「一年後にもう一回エンジニアに戻れるか?」と考えたら、それは多分できるだろう、と。でも逆に、「一年経った後に、また同じように組織運営に挑戦できるか?」というと、その機会はもうないかもしれない、と思ったんです。
これは、例えば大企業とスタートアップのどちらを選ぶか、といった場面にも通じるかもしれません。もちろん、どちらの経験も貴重で糧になると信じていますが、仮に数年後に同じようなチャンスがある可能性を考えると、スタートアップが急成長している"今"だからこそ の挑戦機会やポジションは、後からでは得られない希少性の高い経験になることがあります。
ただ、これはあくまでキャリア選択における一つの考え方であって、全ての人に当てはまるわけではありません。人それぞれ状況や価値観が異なるので、参考程度に捉えていただければと思います。
Almondoに参画することを決めた時も、こうした「後戻りできない、あるいは希少性の高い経験や挑戦は何か」という視点は、判断の一つにあったと思います。
「フルカスタマイズ」AI開発の実際
⸺具体的なプロジェクト事例について、差し支えない範囲で教えていただけますでしょうか?
悠秀さん:
例えばエネルギー関連の会社さんとのプロジェクトでは、各ご家庭や事業所のエネルギー(LPガスなど)の需要予測に取り組んでいます。
エネルギーの種類によっては、トラックなどで配送する必要があるのですが、現状ではいつなくなるかを人が予測して配送計画を立てていることが多いんです。ここには膨大なコストがかかっています。そこで、過去のデータや天候などの情報からAIで需要を予測し、最適な配送ルートを提示することで、大幅な効率化を目指しています。これはデータサイエンス寄りのプロジェクトですね。
また、生成AIを活用した事例としては、店舗従業員向けのAIアドバイザーを導入するプロジェクトもあります。
例えば、数百から数万点もの商品を扱う大型小売店の店舗では、お客様からの多種多様なご質問に対して、一人の店員さんが全ての情報を持って対応するのは難しい、という課題がありました。
そこで、10万件を超える商品情報や接客ノウハウなどの背景情報を学習させたAIアドバイザーを開発し、全ての店員さんがスマートフォンなどから気軽にアクセスし、日々の業務やお客様からの質問対応で頼ることができるようにしました。
現在も多くの店舗で日常的に活用されており、導入から1年以上が経過した今、さらなる機能追加の検討なども進んでいます。

⸺Almondoは「フルカスタマイズ」での開発を強みとされていますが、既存のAIツールやAPIを利用するだけでは、顧客の課題を解決できないケースが多いのでしょうか?
悠秀さん:
はい、そういったケースは少なくありません。大きく分けて二つの壁があります。
一つはセキュリティの壁です。例えばOpenAIのAPIを使うとすると一時的にせよ情報をOpenAIに送ることになります。もちろん、規約上は学習に使われないとされていますが、例えば金融系の会社さんなど個人情報の取り扱いなどが難しい企業さんの場合、「外部にデータを出したくない」というポリシーをお持ちのことがあります。
もう一つは、性能や実用性の壁です。既存のツールやAPIが、お客様の求める精度や機能要件を十分に満たせない、ということもよくあります。「できたっぽい」レベルではなく、本当に業務で使えるレベルにするには、やはり個別の作り込みが必要になることが多いですね。
こうした理由から、お客様の状況に合わせて、一からアルゴリズムを組んだり、オープンソースのモデルを活用したりして、最適なソリューションをフルカスタマイズで開発する必要が出てくるんです。
OSS活用とRAG精度向上の工夫
⸺先ほど、フルカスタマイズ開発が必要となる「セキュリティ」と「性能・実用性」の壁について触れられていましたが、この点について、もう少し詳しく教えていただけますか?
悠秀さん:
まずセキュリティに関してですが、お客様によっては、たとえ学習に利用されない規約があったとしても、機密情報や個人情報を外部のAPIに送信すること自体を許容できないケースがあります。これは企業のプライバシーポリシーなどにも関わってきますね。
また、性能面でも、汎用的なツールやAPIでは、お客様が求める精度や、特定の業務に特化した応答などを実現するのが難しい場面が多々あります。「なんとなく動く」レベルではなく、「本当に使える」レベルにするには、やはり工夫が必要です。
⸺そうした壁を乗り越えるために、Almondoでは具体的にどのような技術やアプローチをとられているのでしょうか? 例えば、セキュリティが厳しい場合にはどう対応されるのですか?
悠秀さん:
セキュリティ要件が厳しい場合は、データを外部に出さない方法を選択する必要があります。その有力な選択肢となるのが、オープンソースのモデルなどを活用して、自前でモデルを構築・運用することです。
例えば、LlamaやDeepSeekといったオープンソースのLLMを利用すれば、お客様の環境内や、我々が管理する閉じた環境でAIシステムを動かすことが可能になります。実際に、お客様の状況によっては、こうしたオープンソースモデルの利用を提案し、開発を進めるケースは少なくありません。オープンソースの存在は、企業のAI活用において非常に重要だと考えています。
⸺なるほど。では、性能面、特に情報の検索精度などを高める上では、どのような工夫をされていますか? たとえばよくRAG(Retrieval-Augmented Generation)という技術が使われますが、単純にPDFなどのデータを投入するだけでは不十分なのでしょうか?
悠秀さん:
おっしゃる通り、単純にデータを投入するだけでは、実用的なレベルのRAGシステムを構築するのは難しいことが多いです。特に企業が扱うデータは量も種類も膨大ですから。
よくある課題としては、投入したPDFなどのドキュメントをAIがうまく読み取れていなかったり、情報が途中で切れてしまったりすることです。また、検索の精度にも課題が出やすい。例えば、キーワード検索に頼りすぎると、情報量が多い(文字数が多い)ドキュメントばかりがヒットしてしまい、本当に求めている簡潔な情報が埋もれてしまう、といったことが起こります。
⸺具体的に、検索でどのような問題が起こるのでしょうか?
悠秀さん:
実際にあったケースでお話ししますと、あるお客様のところで、製品説明書(PDF形式で数千枚)と、過去の顧客対応履歴(QA形式で数万件)という二種類のデータがありました。
PDFの説明書は当然、一つの文書に含まれる情報量が多いですよね。一方、QA履歴は比較的簡潔な問いと答えの形式です。これを単純に一つのデータベースに入れて検索可能にしようとすると、うまくいかないんです。
例えば、キーワード検索をすると、文字数の多いPDFの説明書ばかりが引っかかってしまい、QA履歴にあるはずの、的確でクリティカルな回答がなかなか見つからない。あるいは、QA履歴の方が綺麗に整理されているのに、PDF側の似たような情報(OCRで読み取った精度が低い情報など)がノイズになって、適切な回答が生成できない、といった問題が起こり得ます。
【取材協力】
株式会社Almondo: https://almondotech.com/
株式会社Almondo: COO 松本悠秀さん
本記事を読んでAlmondo株式会社や松本さんの取り組みにご興味を持たれた方は、以下のリンクよりカジュアル面談をお申し込みいただけます。
▼COO松本悠秀さんとのカジュアル面談はこちら(Pitta)
https://pitta.me/matches/DVZRZYyBCxGo
後編では、Almondoの技術的な強みの核心に迫ります。さらにAlmondoが考える「エンジニア育成の5つのフェーズ」やPM的な役割の重要性についても具体的な事例を交えて解説します。急成長スタートアップの技術戦略と組織づくりの秘密にご興味のある方は、ぜひご覧ください。







