AGIラボ運営メンバーの Ryo Satoです。

「脱Excel」と言われて久しいですが、その柔軟さと普及度を考えると、使わないわけにはいかないのが現状です。特に中小企業や部門単位の業務では、Excelが事実上の標準ツールになっていることも多いでしょう。

ただ、Excelには厄介な問題があります。引き継ぎです。前任者が作った複雑な数式、謎のコメント、「触るな」と書かれたセル。誰もが一度は経験したことがあるのではないでしょうか。

2025年1月、AnthropicがExcel向けアドイン「Claude in Excel」を公開しました。現場でありがちな「どこがどうなってるのかわからない謎Excelシート」を、Claudeはしっかり解析できるのか?さらにExcelでバイブコーディングのように業務用Excelシートは作れるのか?検証してみました。

Claude in Excelとは

Claude in Excelは、ExcelのアドインとしてClaudeを呼び出せる機能です。
似たようなサービスとして「Claude for Sheets」がありますが、これはGoogle スプレッドシート用の別サービスです。混同しやすいので整理しておきます。

今回紹介するExcel版は、サイドパネルが開いてClaudeと会話しながらワークブックを操作するスタイルです。

主な特徴は以下の通りです。

  • ワークブック全体を理解 — 複数シートの参照関係、ネストした数式も把握

  • セルレベルで引用 — 「この計算はG145を参照していて…」のように具体的に説明

  • 数式を壊さず編集 — 仮定を変えても依存関係を維持

セットアップ手順

利用条件

Claude in Excelを使うには有料プランが必要です。

※本記事の検証環境は、Microsoft® Excel for Mac + Claude Maxプランです。Proプランだとおそらく比較的すぐに利用上限に達するので、本格的に使いたい場合はMaxプラン以上がおすすめです。

  • Excel 2019以降

  • Excel on the web

  • Excel on Mac / Windows(Microsoft 365)

対応ファイル形式:.xlsx、.xlsm

インストール手順

  1. Microsoft Marketplaceにアクセス

2.「今すぐ入手」をクリック
3. 登録すると次のような画面になるので、「Excelで開く」を選択

4.Claudeのログイン処理を行うと、すぐに使えるようになります

右上の「Open Claude」ボタンでサイドパネルが開きます。なお、移行の解説画像は、OSの違いの差異を意識しなくて済む様にExcel on the webで解説します。

※「価格:追加購入が必要になる場合があります」と表示されますが、これはClaude Pro/Max等のサブスクリプションが必要という意味です。アドイン自体は無料でインストールできます。

実践ユースケース

🔍 ユースケース1:既存Excelのサルベージ

お題:海外出張旅費精算書

架空の「海外出張旅費精算書」を使って解説します。

一見すると普通の経費精算シートですが、下のタブを見てください。7つのシートがあります。

  • 申請フォーム(メイン)

  • マスタ

  • レート

  • 承認シート

  • 履歴

  • ver

  • Sheet1

「これ、前任者が作ったんですけど、引き継ぎなしで辞めちゃって…」というシチュエーションを想像してください。

謎ポイント①:意味不明のメモ

マスタシートを覗いてみると...

「VNの日当おかしくね→鈴木さんに確認中」 という青字のメモ。そして赤字で 「【旧役職コード】※過去データ用、削除禁止」 の警告。

誰が書いたのか、いつ書いたのか、解決したのかすら不明です。

謎ポイント②:誰も知らない仕様

レートシートにはさらに闇が...

「過去レートは何に使う?→誰も知らない」

もはや哲学です。でも「※削除禁止」なので消せません。

Claude in Excelに丸投げしてみる

この状態で新任の経理担当になったとしましょう。普通なら数時間かけてシートを1つずつ読み解くところですが、Claude in Excelに聞いてみます。

サイドパネルに「このワークブックの構造を説明して」と入力。

数秒後、回答が返ってきました。

Claudeの回答(要約)

Claudeは全7シートを分析して、以下のように説明してくれました:

  1. 申請フォーム — メインの入力画面。現在「TRV-2024-001」山田太郎さんの申請が処理中

  2. マスタ — 国コード、役職コード、承認ルールのマスタデータ

  3. レート — 為替レート。過去レートも保存(用途不明だが照合用らしい)

  4. 承認シート — 申請フォームから自動参照されるサマリー

  5. 履歴 — 2019年〜2024年の申請記録(約27件)

  6. ver — バージョン履歴。担当者は 山本さん→鈴木さん→田中さん(現在) と判明

  7. Sheet1 — 未使用

さらに驚いたのが、隠れた警告まで発見してくれたこと。

⚠️ 注意事項(verシートのメモより)
J列(申請フォーム):計算用列で「絶対に触らないで」との警告ありK39付近:詳細不明だが「触らないこと」との記載過去の数式修正で応急処置されており、一部に#N/Aが残っているが動作している状態

田中さん」が現在の担当者だと特定してくれたおかげで、あの「田中メモ」の正体もわかりました。

さらに踏み込んだ質問:「旧役職コードは使われてる?」

せっかくなので、もう一歩踏み込んだ質問をしてみました。

マスタシートにあった 「【旧役職コード】※過去データ用、削除禁止」 の警告。これ、本当に使われてるの?消していいの?という疑問をそのままClaudeにぶつけてみます。

「【旧役職コード】※過去データ用、削除禁止」の警告がありますが、旧役職コードは実際に使われていますか?使われているならどこで使われていますか?

Claudeの調査結果
Claudeは数式の参照範囲まで追跡して、以下のように回答してくれました:

問題点

  1. 旧役職コード(B、K)は数式の参照範囲外

    • 役職係数を計算する数式 =IFERROR(VLOOKUP(B7,マスタ!H2:J5,3,FALSE),"") は H2:J5 までしか見ていない

    • 旧役職コード(H16付近)は参照範囲外

  2. SM(シニアマネージャー)も参照範囲外

    • ver1.6で追加されたSM(H13)も、現在の数式では参照できない

  3. 履歴シートにも旧役職コードの使用なし

    • 過去データを検索した結果、「B」や「K」という役職コードは見つからなかった

結論:

旧役職コードは実質的に使われていません。ただし、過去に役職コードを含むデータがあった可能性や、別システムとの連携で必要な可能性もあるため、削除前に経理の佐藤さん(verシートにメモあり)に確認することをお勧めします。

これはすごい。数式の参照範囲まで追跡して「使われてない」と判断してくれた上に、削除前に確認すべき人まで特定してくれました。さらに、ver1.6で追加されたSMも「現在の数式では機能していない」という潜在的なバグまで発見してくれています。

ポイント

  • 全シートを一括で把握できる — 複数シートの参照関係も含めて説明してくれる

  • 隠れたメモや警告も発見 — 人間が見落としがちな情報も拾ってくれる

  • 数式の参照範囲まで追跡 — 「使われてる?」という質問に対して、VLOOKUPの参照範囲まで調べて回答

引き継ぎExcelの解読には、かなり実用的だと感じました。「これ消していいの?」という質問にも、根拠を持って答えてくれるのは心強いです。

最後の謎:「エラーだけど動いてる」ってどういうこと?

申請フォームの右下に、さらに気になるエリアを発見しました。

「【旧計算】」 というラベルの下に、tmp1、tmp2、flg、adj、ERR_CHK という謎の変数名。そしてその横には真っ赤な #N/A エラーが並んでいます。

極めつけは田中メモ:

「↑エラーだけど動いてる」

…動いてるの?エラーなのに?これは聞いてみるしかありません。

「【旧計算】エリアに#N/Aエラーが出ていますが、「エラーだけど動いてる」とあります。これは何ですか?」

Claudeの調査プロセス

Claudeはまず、該当エリアの全セルの数式を抽出して表にまとめてくれました。

そして各数式の参照先まで追跡。レートシートに「USD_OLD」が存在しないことを突き止め、エラーの連鎖を解明してくれました。

ポイント:Claudeはここまで見てくれた

  • 数式の中身を全部読んで表にまとめてくれた

  • 参照先のシート(レートシート)まで見に行った

  • 「どこからも参照されていない」ことまで調べた → デッドコードと判断

  • 「エラーだけど動いてる」理由を特定 → IFERRORがエラーを吸収して0を返すから

結論: 「触るな」と書いてあるけど、実はどこからも使われていないデッドコード。ただし削除前に確認は推奨。

これで引き継ぎExcelの解読は完了です。Claude in Excelは、数式の依存関係を追跡し、「使われているか」「エラーの原因は何か」を具体的に説明してくれました。引き継ぎ資料がない状況でも、AIと対話しながら理解を深められるのは大きなメリットです。