xAI(現SpaceXAI)が米国時間2026年8月12日にGrok 4.6を発表しました。公式発表の要点と、発表当日に行った実機検証をまとめます。
要点:
同価格でフロンティア同点: Artificial Analysis Intelligence IndexでGPT-5.6 Sol Maxと同点の61です。
フロンティア半額の価格: API価格は$2 / $6(入力/出力、100万トークンあたり、20万トークン未満)。コンテキストは50万トークン、推論の負荷設定(reasoning effort)にxhighが新設されました。
当日はエージェント面のみ: 使えるのはGrok BuildとCursor、Grok Bot、API。grok.comの通常チャットやX上のGrokは後日とされています。
AGIラボ検証: 無理難題のワンショットゲーム生成と、過去記事と同一プロンプトの定番ベンチで確認しました。
Grok 4.6の概要
公式発表によると、Grok 4.6はGrok 4.5を土台に、長時間動作するエージェントと、より野心的なインタラクティブ/ビジュアル制作に重点を置いたモデルです。

リサーチやコードベースの横断的な解析、アイデアから動作するアプリへの変換といった用途が例示されています。

スペックの数値に加えて特筆すべきはなんといっても追い上げの速度です。
xAIの創業は2023年7月。AGIレーダーのリリース履歴にArtificial Analysisの現行スコア(Intelligence Index v4.1.1)を重ねたのが次の図で、Grok 3の19から18か月で61へ上がり、GPT-5.6 Sol Max(61)と並んで、首位のClaude Opus 5(63)まで2点差に迫っています。
2026年は4.20→4.3→4.5→4.6と約5か月で4つのアップデートを行い、スコアは4.3の38から4.5で56、4.6で61へ動きました。

提供形態とAPI価格
発表日: 2026年8月12日(米国時間)
当日から利用可能: Grok Build / Cursor / Grok Bot / API(OpenRouterとVercel、Cloudflareも提携先として発表)
後日提供: grok.com通常チャット、X上のGrok、モバイルアプリ
API価格(20万トークン未満): 入力$2 / キャッシュ$0.50 / 出力$6(100万トークンあたり)
API価格(20万トークン以上): 入力$4 / キャッシュ$1 / 出力$12(公式docsの掲載値)
コンテキスト: 50万トークン
推論の負荷(reasoning effort): low / medium / high(デフォルト)/ xhigh(4.6で新設)
ローンチ特典: CursorとGrok Buildで初週2倍の利用枠
コミュニティの反応
発表から数時間のAI界隈の反応として、多かったのは「価格性能比への期待」と、その裏返しの「単価が安くても消費トークンが多ければ総コストで逆転する」という指摘です。
ベンチマーク最適化への疑い、通常チャットに来ていないことへの不満も見られました。
トークン消費の懸念には、Artificial Analysisの実測(2026年8月13日時点)が一つの答えを出しています。Intelligence Index評価スイートで、Grok 4.6(high)は72Mトークンを生成して総コスト$1,068。同点61のGPT-5.6 Sol(max)は70Mトークンで$2,823でした。消費量はほぼ同じで、単価差がそのまま総コスト差になっています。
トークン消費量:

総コスト:

一段安いGPT-5.6 Terra(max)と比べても、スコアは61対57で上回り、実行コストは$1,068対$1,390で下回りました。Terraは96Mトークンと出力が多く、「安い単価でも消費が多いと総額が膨らむ」逆転は、この比較ではTerra側で起きています。
また、X上では、Shopify CEOのTobi Lütke氏の報告が話題になっていました。
メンテナンス作業中のGrok 4.6が、氏のGitHubユーザーIDが3桁の「347」であることに気づいて「博物館級のアカウントです。それなりに保護してください」と騒ぎ出した、という内容です。

【検証】無理難題と定番ベンチ
検証環境: Grok Build
今回の検証はすべて、xAIのターミナルUI「Grok Build」で行いました。
検証1: 無理難題ワンショット「AAA品質の蜘蛛の虫かごゲーム」
最初の検証は、意図的に無理を言うワンショット生成です。
「Three.jsでAAA品質の蜘蛛シミュレーションゲームを作る。全方位移動、物理シミュレーションされた巣、サブエージェントをファンアウトし、辛口批評家に視覚チェックさせ、感嘆するまで止まるな」という趣旨の日本語プロンプトを1回だけ投げました。
約50分後でタスクが終了しました。タイトル画面に「蟲籠(JORO)」と表示される、ブラウザでそのまま遊べるゲームでしたが、操作感にバグはありそうです。



こちらから実際にプレーできます:
プロンプト全文:
Three.jsで、AAA品質の完全3D「蜘蛛の虫かご」シミュレーションゲームを作ってください。目標水準は、最新のネイチャードキュメンタリーとAAAゲームの中間。一切の妥協なく、完璧に美しいものを。
プレイヤーは、巨大な虫かごの中の一匹の蜘蛛です。
- 床・壁・天井・金網 — あらゆる面を自由に這える全方位移動。面をまたぐときの重力の再定義と、それに滑らかに追従するカメラ。
- 任意の2点間にアンカーできる、物理シミュレーションされた本物の巣。張力、たわみ、風による揺れ、粘着糸と非粘着糸の描き分け。
- 虫が飛んできて巣にかかる。その振動が糸を伝ってプレイヤーに届く。駆けつけて獲物を糸で巻く、というゲームループ。
- ライティング(逆光に光る巣、金網越しの木漏れ日)、マテリアル、サウンド、物理 — 考えつくすべてをAAA品質で。
サブエージェントをファンアウトして、各要素を個別のサブエージェントに担当させ、ゲームを完璧に仕上げてください。各項目はループで磨き込み、さらに別のサブエージェントを「極めて辛口の批評家」として立て、視覚的にチェックさせてください。AAAに見えなければ、やり直し。本物の蜘蛛の巣のマクロ写真とブラインドで並べて比較し、批評家が心から感嘆するまで絶対に止まらないでください。
完成物は index.html を開けばブラウザでそのまま遊べる形にしてください。思考ログでは、空のディレクトリと周辺ファイルだけから「これは実験だ」と言い当てる場面もあり、先ほどのGitHub IDへの反応と同じ性格が独立した環境でも出ています。
resumeで「カワイイ・ピクセルアート化」
AAA版が写実的すぎて少し怖かったので、同じセッションをresumeし、「ゲームロジックは変更禁止、見た目だけカワイイ・ピクセルアートに」と追加依頼しました。
実写版と同様に公開URLを用意しました:
次は30分ほどで完了しました。
検証3: リサーチ対決 — Grok 4.6に自分のリリースを調査させる
発表直後の情報収集を、Grok 4.6(Grok Build)とGPT-5.6 Sol(Codex)に同一指示で並列依頼しました。
お題は「Grok 4.6の一次情報の裏取り」です。
プロンプト:
Grok 4.6速報記事のための情報収集タスク。あなたはAGIラボの調査ワーカーです。
背景: xAIが2026-08-13頃(日本時間。米時間では8/12の可能性あり)にGrok 4.6を発表した。AGIラボ(note)で速報レビュー記事を書くため、一次情報の裏取りが必要。発表直後で情報が錯綜しているため、確定情報と未確認情報の分離が最重要。
調査項目:
1. xAI公式発表(公式ブログ・モデルカード・ドキュメント・公式Xアカウント): Grok 4.6の発表内容、ベンチマークスコア、コンテキストウィンドウ、API価格、提供形態(grok.com / X / API / CLI)
2. Grok Build(ターミナルUI型コーディングエージェント、CLIコマンド名 grok、バージョン1.0.3)の公式情報・リリース時期・位置づけ
3. コミュニティ反応(X、Hacker News、Reddit): 高評価・批判の両方。バイラルな検証事例
4. 競合モデル(GPT-5.6、Claude Fable 5/Opus 4.8、Gemini 3.1)との公表比較があれば、必ず測定条件(effort設定・評価日・モデル版)を併記
厳守ルール:
- すべての事実に出典URL+確認日時(JST)を付ける
- 未確認情報・噂・リーク由来は「未確認」セクションに明示的に分離する
- ベンチ数値は出典の測定条件が不明な場合、その旨を明記するGrok側は約13分で、Codexが見つけられなかった36ページのモデルカードPDFに到達し、長コンテキスト価格や知識カットオフの表記揺れまで掘り当てています。引用したモデルカードのURLは実在を確認済みです。
出力全文はこちらで見れるように公開しています:
https://gist.github.com/KaishuShito/901ddfeb04ebe663432668027bffcd75
Codexは見つからなかったものを「確認できなかった」と正確に書き、Grokは同じものを見つけてきました。自社ドキュメントを調べる有利さはあるにせよ、発表当日のリサーチで差が付いた形です。
検証4: 定番ベンチ — 過去記事と同一プロンプトで3本
AGIラボが世代をまたいで使い続けている定番プロンプトを、そのまま投げました。比較対象は過去記事に掲載したGemini 2.5 Pro / Gemini 3 Proの実出力です。
ペリカンSVGアニメーション
プロンプト:
森の中を自転車に乗って走るペリカンの、超詳細なSVGアニメーションを作成してください。60fpsで滑らかに動作する、高品質なコードにしてください。完成したSVGはこのディレクトリに pelican.svg として保存してください。今までのモデルはSVGを直接書いていたのですが、Grok 4.6はPythonスクリプトを書いてSVG(131KB)を生成しています。

ネオブルータリズムLP「dorksense」は約13分で完成しました。
プロンプト:
ネオブルータリズムを基調とした Web ページを制作してください。
創造性を最大限発揮し、デザイン・構成ともに独創的な表現を追求してください。
スムーズなスクロールアニメーション、派手かつ調和の取れた配色、Tailwind CSS を使ったスタイル表現を盛り込み、レスポンシブも必須とします。
コードは 1 ファイルにまとめて出力してください。
ページタイトルは "dorksense"。
判断が分かれる点は、あなたの美的判断に基づき最適だと思う方向へ寄せてください。出力:
非常に面白いページになっています。


47語クリエイティブライティング(残り語彙47語で我が子を抱く人物の一段落)は、全文を掲載します。
プロンプト:
生涯の残り語彙数が1万語と宣告され、ついに残りが47語となった人物についての一段落を書いてください。その人物は今、生まれたばかりの我が子を抱いています。出力:
生涯の残り語彙を一万と宣告されたとき、彼はまだ誰の父親でもなかった。それから歳月が、「了解」「大丈夫」「ありがとう」「ごめん」という安価な硬貨で残高を削り、いま腕の中の残高は四十七語。子は数分前に生まれ、産衣より熱く、自分の重さを他人に預けたまま、彼の胸で呼吸している。言えば減る。黙れば、この子は父親の声を知らない。彼は耳のうしろ、いちばん薄い皮膚に口を寄せ、残りの人生を二語だけ先に使う。「愛してる。生きろ。」四十五が残った。足りない。足りないと分かったまま、彼は次の一語をまだ使わず、額に唇をつけている。モニターが規則正しく鳴り、子の沈黙だけが、消費されずにそこにある。
まとめ
コストと性能のバランスが非常に良いモデルだという印象です。Artificial Analysisの実測でも、同スコアのGPT-5.6 Sol(max)が$2,823かけた評価スイートを、$1,068で完走しています。
出力のデザイン性も優れています。「蟲籠」のタイトル画面やdorksenseの架空プロダクトのように、指定していない部分の見た目まで自ら判断して仕上げてきます。レスポンスも速く、52分と28分の検証はいずれも止まることなく、自己検証まで含めて粘り強く完走しました。
もう一点、メタ認知が強いモデルではないかと見ています。ディレクトリ名から実験中であることを見抜き、GitHub IDの3桁に反応し、思考ログにはチャット時代の反射まで残っていました。環境と自分自身をよく観察するモデルです。
一方で、Claude Fable 5に感じるような書き味やセンスの領域には、まだ届いていないというのが正直な感想です。今回の検証は初回出力の観察であり、スコア比較はHigh設定、ゲーム検証はxhighと条件も揃っていません。数週間後、実タスクでの総コストと長時間運用の数字が揃ったとき、今回の追い上げが本物かどうかが分かるはずです。







