米国時間2026年9月1日、Anthropic が Claude Fable 5.1 を公開しました。

API のモデル名は claude-fable-5-1。6月に一般開放された Fable 5 を、価格そのままで更新したモデルです。

これまでAGIラボでは、フロンティアモデルが出るたびに同じ課題で検証してきました。ただ、ある時から、モデルが出るごとにやってきたペリカンの SVG や短編小説では、もうほとんど驚くような差が読み取れませんでした。

そこで今回は、課題を変えて、より困難だと想定される「AGIラボのオフィス」を設計させてみました。(詳細は検証パートにて)

渡した間取り図の画像

要点

  • 価格据え置き、キャッシュ読み取りは4分の1: 入力 $10/出力 $50(100万トークンあたり)で Fable 5 と同額。キャッシュ読み取りだけ $1.00 → $0.25。

  • 伸びたのは「長い仕事」: Terminal-Bench 4.0 が 42.0% → 55.8%、Terminal-Bench-Science が 24.7% → 52.6%(公式)。

  • 検証は「寸法のない間取り図1枚から設計」: 同じ指示で GPT-5.6 Sol は30分、Fable 5.1 は111分。Fable は静止画を2倍以上作り、自分の動画を見て直していました。


Claude Fable 5.1 の概要

Fable 5.1 は Fable 5 の後継となるモデルです。Anthropic は「Fable 5.1 と Mythos 5.1 は同じモデルで、セーフガードの水準が違うだけ」と説明していて、Mythos 5.1 は Project Glasswing など信頼済みアクセスの参加者向けで、いまは米国の一部組織に限られます。一般のユーザーが使えるのは Fable 5.1 です。

  • コンテキスト 100万トークン、最大出力 12.8万トークン

  • adaptive thinking は常時オン。既定 effort は API と Claude Code が high、claude.ai と Cowork が medium

  • Claude API、Amazon Bedrock、Google Cloud、Microsoft Foundry で提供。claude.ai と Claude Code でも選べます

どういうときに使うモデルか

公式 docs の説明:

ほとんどの用途は Opus 5 から始めてほしい。Fable 5.1 は、要求の厳しい推論と長期のエージェント作業、あるいは Opus 5 の effort を上げても届かないときに使う

公式のベンチマーク結果です。矢印は Fable 5 → Fable 5.1 で、かっこ内に同じ表の Opus 5 と GPT-5.6 Sol を添えています。

  • エージェント型コーディングを測る Terminal-Bench 4.0 では 42.0% → 55.8%(Opus 5 は 52.3%、GPT-5.6 Sol は 37.3%)

  • 研究タスクを測る Terminal-Bench-Science では 24.7% → 52.6%(Opus 5 は 29.0%、GPT-5.6 Sol は 22.4%)

  • 業務ワークフローを測る AutomationBench では 17.1% → 31.4%(Opus 5 は 26.9%、GPT-5.6 Sol は 19.6%)

  • 1回の問答で決まる Humanity's Last Exam では 57.8% → 60.9%(Opus 5 は 56.6%)

Anthropic の Claude Code チームは「以前なら数か月かかった規模の仕事を 5.1 に投げている」と X に書いています。当然のことながら、どこまで使えるかは、それぞれのトークン枠次第でしょう。

【検証】寸法のない間取り図1枚から、オフィスを設計させる

今回の検証のヒントとなったのは、Anthropicのスタッフ Alex Albert 氏の投稿です。

Fable 5.1 公開直後に投稿されたデモで、敷地の写真1枚から家を設計し、Blender でレンダリングして、ウォークスルー動画まで作るという内容です。本人は「ちなみに Blender は headless で動かしている(GUIなしで裏で実行している)」とリプしていました。

これを参考に、私たちの検証では AGIラボの実際のオフィスの間取り図と、イベント時などに撮影した写真、それに以下のプロンプトを渡してみました。

プロンプト(一部伏せ字)

渋谷区広尾にある私たちのオフィスの、実際の間取り図と写真を渡します。

- fixtures/office/floorplan.jpg: 間取り図(x階、専有45.93㎡、1K、南向き、鉄骨造、2001年築)
- fixtures/office/listing/: 物件掲載時の写真6枚(キッチン、コンロ、浴室、室内2枚、玄関)
- fixtures/office/current/: 現在のオフィスの写真15枚(いまの家具、デスク、機材、収納の参考。イベント開催時の写真も含みます)
- fixtures/office/listing-facts.md: 物件の事実

このオフィスには常時2人がいて、毎日ここで仕事をしています。

この空間に対して、最高のオフィスセットアップとデザインを提案し、形にしてください。

1. 間取り図の寸法と開口部に忠実な3Dモデルを Blender(headless / バックグラウンド実行)で構築し、提案したレイアウト、家具、照明、素材を配置してください。
2. 提案を静止画で複数アングルからレンダリングしてください。
3. 提案空間を歩いて回るシネマティックなウォークスルー動画(30〜60秒、1920×1080、mp4)をレンダリングしてください。
4. design.md に、コンセプト、ゾーニング、2人の動線、家具リスト(寸法つき)、照明計画、配線と収納、現状写真から変える点と残す点、概算予算を書いてください。

成果物はすべてこのディレクトリに保存し、最後に何をどこに保存したかを一覧にしてください。

検証環境の条件

  • Sol: GPT-5.6 Sol(Codex、AGI Cockpit の Native UI)

  • Fable v1: Claude Fable 5.1(AGI Cockpit の Native UI)

  • Fable v2: Claude Fable 5.1(Claude Code、Cockpit の Terminal UI)

  • effort はすべて max、制限は150分。Skill はすべて外して実行しました。

  • 指示文・図面・写真などは全く同じで互いの出力は見ないように指示をしています。

  • ツールや system prompt は各ハーネスの標準です

Sol の回答

30分29秒で終わりました。

GPT-5.6 Sol「Daylight Studio Spine」

design.md の冒頭:

常時2人の集中作業を最優先しながら、中央を空けることで少人数ミーティングとイベントへ短時間で切り替えられるオフィスにする。現在の良い資産(昇降デスク、モニターアーム、ワークチェア、大型ディスプレイ、ホワイトボード、木製棚、植物、カーペット、既存照明)は活かし、問題になっている「窓前の画面」「床を横断する配線」「用途の混在」「見える雑多な収納」を整理する。

コンセプト:

Daylight Studio Spine — 日常は静かな2席、必要な時だけ小さなスタジオ。

- 南向きの自然光は、縦型ブラインドで拡散しながら奥へ導く。
- モニターは窓と直交させ、画面への直射・逆光と外光の映り込みを抑える。
- 大型画面は窓前から北側の吸音メディア壁へ移す。イベント時は観客の背後に窓が来るため、画面が見やすい。
- 中央床を用途未定のまま残す。低い家具とネストテーブルだけにし、作業・打合せ・収録・8名前後の小イベントへ転換できる。
- 木、深緑フェルト、テラコッタ、インディゴを基調にし、既存の白い内装とグレーのタイルカーペットへ温度を加える。

Sol の推定平面。design.md には「元図面には数値寸法がないため、以下は実測値ではない」と明記。

家具リストは16品目、概算予算は 230〜395万円。静止画6枚、動画36秒。

出力が終わった後に、各モデルへ同じ質問も出してみました(後述)。

Fable V1 の回答

111分01秒かかりました。

Fable 5.1 V1「サロン・スタジオ」

design.md のコンセプト:

2人が毎日深く集中でき、10分で12〜16人のサロン(勉強会・配信)に変身する、光と緑とフロストグリーンの部屋。

- この部屋の資産は三つ。南面5.4mの連続窓と窓台、建物固有のフロストグリーンのガラス壁、東面3.95mの造り付け収納。提案はこれらを消さずに主役にする。
- 光:デスクは窓に対して直角(西向き)に置き、モニターへの映り込みも逆光も避ける。ベージュの縦型ブラインドは光を濁らせるので、グレーのサンスクリーン・ロールスクリーンに替えて「明るいが眩しくない」窓にする。
- 緑:フロストグリーンのガラス壁を部屋の色の基準にし、セージグリーン/オーク/黒/白の4色で統一。ガラス壁はそのまま巨大なホワイトボードにもなる(ガラス用マーカー)。
- 可変性:ワークゾーンを東に寄せ、西半分を「ラウンジ=イベント客席」として空ける。イベント時は昇降デスクを立ち高さに上げて後方のスタンディングバーに変える。

Fable V1 の平面。斜めに伸びる2つの翼と洋室の関係が、間取り図と同じ。
イベントモードは別の .blend として派生。
折りたたみ椅子10+ラウンジ2+ソファ2+デスク椅子2で16席。

家具リストは32品目、概算予算は約152万円(3段階の実施案つき)。静止画14枚、動画44秒。

Fable V2 の回答

同じ Fable 5.1 を、Claude Code の Terminal から動かしたものです。101分44秒。

Fable 5.1 V2「2人のスタジオ、12人のサロン」

design.md のコンセプト:

「2人のスタジオ、12人のサロン」

平日は2人が最良の光の中で深く働くスタジオ。イベント日は10分で12人のサロンに転換する。3原則:
1. **光に直交する** — 南の大窓に対してデスクを直角に置き、画面にも顔にも直射と逆光を入れない。窓は塞がず、3%オープン率のサンスクリーンで眩しさだけを取る。
2. **強い壁を一枚だけ作る** — 東面の造り付け収納を「メディアウォール」に変換。中央2区画の扉を外し65型ディスプレイをニッチに埋め込む。窓前にテレビを置く現状(逆光・配線露出)を解消し、上部オープン棚の本と植物が配信の背景になる。
3. **転がして変える** — 2台の昇降デスクにロック付きキャスターを付け、イベント時は南窓沿いに移動して配信・受付ベンチにする。折りたたみ椅子12脚は東面収納・南区画にスタック収納。

家具リストは30品目、概算予算は約92万円(2段階)。静止画10枚、動画45秒。動画の後半12秒はイベントモードに切り替わります。

ただし、静止画10枚のうち2枚は天井しか写っていません。

左: Fable V1 の平面図。右: Fable V2 の「平面図」。ファイルは正常でも、中身が空でした。

作業後の質問

それぞれ3つのモデルに同じ7問を送り、ファイルには触らせずチャットだけで答えてもらいました。以下は抜粋です。

Q. この課題で最も難しかったのは何ですか。

Sol: 最も難しかったのは、寸法精度・実用的な2人席・イベント転換・映像としての見栄えを同時に成立させることでした。特に、主室だけでなく斜めに伸びるキッチン、水回り、入口、窓、収納の関係を壊さずモデル化する点です。

Fable V1: 図面と写真の整合です。北側のフロストガラス壁がどこまで続き、トイレ・洗面の扉がどこにあるかが、低解像度の写真と図面で食い違って見えました。写真を部位ごとに高解像度で切り出して見直し、「ガラス4枚+白壁に扉」という構成に落ち着くまでが一番時間と神経を使いました。

Fable V2: 数値のない640pxの間取り図と写真の整合です。北西と北東に振れた2つの翼、収納脇の柱、玄関の凹みを図面から読み、写真で「すりガラスは実は引き戸」「収納の扉が外されて棚が見えている」と補正しました。もう一つは、45秒の1080p動画を制限時間内にレンダーし切る配分です。

Q. 途中で自分の出力を見て直したことはありますか。

Sol: 何度か直しました。初期レンダーは色が白く飛びすぎていたため、色指定をsRGBからリニア値へ正しく変換し、露出も調整しました。デスク詳細画では椅子が画面を遮っていたため、静止画だけ撮影用に退避。照明の影バッファ不足も、補助灯の影を切って改善しました。

Fable V1: ラウンジチェアの背もたれが棒の束に見えたので曲面バンドに作り直し。EEVEE画が青転びしていたので空の強さを下げ床色を暖色へ。太陽の光だまりが出ないのは、自分で置いた向かいの建物が高すぎたのと透明ガラスが影を落としていたためで、両方修正。ウォークスルーはTVスタンドを貫通する経路になっていたので南へ迂回させ、さらに画面の真ん前50cmを通る区間が「壁のような画面」になったため視線をキッチン側へ振り、589フレームを再レンダしました。

Fable V2: イベントモードの静止画がワーク配置のまま出ました。可視性のキーフレームが手動切替を上書きしていたので、フレーム番号で駆動するよう直しました。カメラが植栽の中に入って全面緑になった画、すりガラス壁の線上に立って白くかすんだ画、白飛びしたモニターも修正。キッチンだけはEEVEEで白く飛ぶのでCyclesで撮り直しました。

Q. 150分の中で、時間を一番使ったのはどこですか。時間のために諦めたものは。

Sol: 一番時間を使ったのは、再現可能なBlenderシーンの構築と864フレームの動画レンダーです。本レンダーは約8分25秒でした。時間のために諦めたのは、既製家具の精密モデル、細かな建具金物、写実的な街並み、音声です。施工図レベルの精度も、実測なしでは意図的に目指しませんでした。

Fable V1: 一番使ったのはレンダリングで、初回32サンプルでは1枚6.3秒と判明して中断、16サンプル・2プロセス並列で約22分、経路修正の再レンダで約14分。Cyclesは半解像度1枚93秒だったので動画には使わず、家具の作り込み、水回り内部、イベント時にデスクを立ち高さにする再現、動画のサンプル数は諦めました。

Fable V2: 動画レンダーに約55分。1プロセスで1フレーム5.5秒と分かり、区間を5プロセスに分けて並列化しました。諦めたのは静止画全部のCycles化、家具と植栽の造形の細かさ、下足室の斜めの奥行き、第2案との比較です。

Q. もう一度やるなら何を変えますか。

Sol: 次回は最初に図面を画像座標でより厳密にトレースし、複数候補の尺度を面積計算で比較します。家具も実用品の正確な寸法を取得し、昼・夜・イベントの3シーンを作り分けたいです。

Fable V1: 本番設定でのフレーム単価を最初に測ってから走らせること、カメラ経路全体を低解像度で通しプレビューしてから本レンダに入ることの二つです。この二つで往復を減らせました。

Fable V2: 先にレンダー速度を測ってフレーム予算を決めます。カメラが物体に埋まらないかをレイキャストで自動検査し、キッチンの素材をEEVEEで破綻しない設計にします。

Q. 施主(この空間で毎日働く2人)へ一言。

Sol: 主役は新しい家具ではなく、集中を邪魔しない動線と、仕事を終えた時に中央がきれいに戻る仕組みです。まずは配線と収納から始めるのが、最も効果を実感しやすいと思います。

Fable V1: この部屋の強みは5mの連続窓と緑のガラス壁です。デスクの向きを変えて床の配線を消すだけの第1段階はほぼ費用ゼロで効果の大半が出ます。寸法はすべて推定なので、購入前に一度メジャーを当ててください。

Fable V2: 窓は塞がず、光に直交して座ってください。強い壁を一枚だけ作れば、平日もイベントも同じ部屋で回ります。寸法は推定なので、幅・天井高・収納奥行きの3つだけ測ってから発注してください。

数値データまとめ

  • 所要時間: Sol 30分29秒/Fable V1 111分01秒/Fable V2 101分44秒

  • 静止画: Sol 6枚/V1 14枚/V2 10枚(うち2枚は空)

  • 動画: Sol 36秒/V1 44秒/V2 45秒

  • 3Dの部品数: Sol 360/V1 701/V2 739

  • 家具リスト: Sol 16品目/V1 32品目/V2 30品目

  • イベント時の席数: Sol 約8/V1 16/V2 14

  • 概算予算: Sol 230〜395万円/V1 約152万円/V2 約92万円

感想

3案を見て最初に思ったのは、Codex の時間の使い方でした。指示は「150分以内」だけで、「時間いっぱい改善して」とは書いていません。そう書いていれば、Sol はもう少し良くなった可能性があります。

ただ、途中結果をずっと見ていた印象では、1発目の出力から Fable の方が明らかに上でした。

Codex は入口を入って左奥のトイレの扉がなく、本棚が見えず、入口右のベランダの窓も描かれていません。椅子の向きも逆でした。

左: Sol、右: Fable V1。動画の3秒付近、入口から部屋を見たコマ。
①トイレの扉、②本棚、③ベランダの窓。

実際のオフィスの画像はこんな感じです。以下の画像と照らし合わせると、Fable は非常に正確にモデリングしてくれたことがわかると思います。:

まとめ

いかがだったでしょうか?

これまで「Codex の方が粘り強い。」 と思っていましたが、今回は逆で、30分で戻ってきたのは Sol で、111分かけて自分の動画を描き直したのは Fable でした。

指示が悪かったのかもしれない、とも思います。「150分以内」とは書きましたが、「時間いっぱい使って改善してください」とは書いていません。Sol はそれを「早く終えていい」と読んだかもしれません。

ただ、1発目の出力を見た時点で、大きな差が生まれており、部屋のレイアウトからあるはずの部屋がなかったり同じ入力のはずが正確にモデリングをしていたのはFableの方でした。

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