今週はMicrosoft、Google、Anthropicといった大手AI企業のイベントが重なり、連日大型の発表が予想される1週間となっています!

早速、日本時間の5月20日深夜からMicrosoft Build 2025が始まり、初日の基調講演で多くのアップデートが発表されています。

特に注目は以下の4点です。

  • GitHub Copilotの進化:「コーディングエージェント」の登場

  • 企業特化AIを実現する「Copilot Tuning」

  • AIアプリ・エージェント開発の統合プラットフォーム「エージェントファクトリ (Azure AI Foundry)」

  • オープンな連携を実現する「MCP (Model Context Protocol) サーバー」への対応

GitHub Copilotが「コーディングエージェント」へと進化

Microsoft Build 2025で発表された「コーディングエージェント」は、GitHub Copilotを“単なるコード補完ツール”から、具体的なタスクを任せられる“チームメンバー”のような存在へと進化させるアップデートとして紹介されました。

たとえば、開発者が「このバグを直して」「この機能を追加して」と指示すると、コーディングエージェントが自動でブランチを切り、コード修正からテスト、Pull Requestの作成までを一通り実行できるようになります。

主な特徴

  • 自律的なタスク実行:開発者はGitHub Copilotに対し、バグ修正や新機能の実装、継続的なコードメンテナンスといった開発タスクを割り当てることが可能になります。コーディングエージェントはこれらのタスクを自律的に実行します。

キーノートはSatya Nadella自身がデモを行う
  • IDEとの連携強化 (エージェントモード):Visual Studio Code (VS Code) や Visual Studio 内で、コードベースの分析、複数ファイルにまたがる編集、テストの実行、エラーの修正、ターミナルコマンドの提案などを、単一のプロンプトから行えるようになります。

  • アプリのモダン化サポート:Javaおよび.NETアプリケーションの更新、アップグレード、モダン化といった時間のかかるタスクをAIエージェントが支援し、プロセスを短縮します。

エージェントの進化

従来のGitHub Copilotは、開発者の入力に対して提案を行う「ペアプログラマー」としての役割が中心でした。「コーディングエージェント」は、より能動的に開発チームの一員としてタスクを処理し、開発者がより創造的な業務に集中できるようサポートします。

利用について

  • GitHub Copilot コーディングエージェント: プレビュー提供が開始されています。

  • GitHub Copilot エージェントモード: VS Code、Visual Studioにてプレビュー提供が開始されており、将来的にはJetBrains IDE、Eclipse、Xcodeへも拡張される予定です。

  • アプリモダン化機能: Javaおよび.NETアプリ向けにプレビュー提供が開始されています。

https://twitter.com/satyanadella/status/1924535896139038767


AIを自社仕様に最適化:「Copilot Tuning」

「Copilot Tuning」は、Microsoft 365 Copilotを企業の持つ独自の知識や業務プロセスに合わせてファインチューニングし、より専門性の高いアシスタントへと進化させるための新機能です。

主な特徴

  • 企業知識の活用:企業が持つドキュメントやデータを学習ソースとして利用し、特定のドメインにおけるタスクの実行速度と精度を高めます。

  • 厳格なアクセス制御:チューニングされたモデルへのアクセスは、元となるトレーニングデータの権限に基づいて企業内で管理され、情報漏洩のリスクを低減します。

  • カスタムエージェントへの適用:Microsoft 365 Copilot Agent Builderで構築されたエージェントが、これらのチューニング済みモデルを活用し、より専門的なタスクを実行できるようになります。

https://www.youtube.com/watch?v=aDmNUqSGfeI

具体的な活用例

  • 法律事務所:過去の判例や社内文書のスタイルを学習し、特定の法的文書作成を支援するエージェント。

Microsoftが提供する安全なテクノロジーとプラットフォームに、私たちの人材やデータを融合させることで、新たな可能性が生まれることを楽しみにしています。このコラボレーションにより、契約書や陳述書などの複雑な法的文書の高品質な初稿を、自社独自の先例や専門知識を基にすでに作成できています。このようなパートナーシップこそが、法務分野の未来を形作るでしょう。

  • 専門コンサルティング会社:特定業界の規制や市場動向に関する社内ナレッジを学習し、コンサルタントの質問に的確に回答するQ&Aエージェント。

Microsoftと共同でCopilot Tuningプロジェクトに取り組めることを大変嬉しく思います。税務分野に特化してファインチューニングされたLLMを、私たちEYの持つ専門知識や税務アドバイザーのノウハウと統合し、M365を通じて市場に新たな税務サービスを提供します。この相乗効果によりサービス品質が向上するだけでなく、すでに業務の場となっているM365内で、税務・法務分野におけるリサーチを大きく進化させ、関連知識やインテリジェンスを迅速に活用できるようになります。

Copilot Tuningのメリット

Copilot Tuningを利用することで、汎用的なAIアシスタントが、各企業の特性や専門性を反映した、実践的なビジネスパートナーへと変わることが期待されます。

提供時期

  • 2025年6月より「Copilot Tuning Program」を通じて提供が開始される予定です。

  • 対象は、Microsoft 365 Copilotライセンスを5,000以上保有する顧客となります。


AIアプリ・エージェント開発の統合拠点:「エージェントファクトリ (Azure AI Foundry)」

「エージェントファクトリ」とも呼ばれるAzure AI Foundryは、AIアプリケーションおよびAIエージェントの設計、カスタマイズ、デプロイ、管理を一元的に行うためのプラットフォームです。
Build 2025では、その機能がさらに強化されました。

主な新機能と拡張

多様なAIモデルへの対応強化

  • xAIの「Grok 3」、Black Forest Labsの「Flux Pro 1.1」、OpenAIの「Sora」(プレビュー)など、新しいAIモデルが追加されました。

  • さらに、Hugging Faceから10,000以上のオープンソースモデルが利用可能となり、モデル選択の幅が広がっています。

https://azure.microsoft.com/en-us/products/ai-model-catalog

Azure AI Foundry Agent Service (一般提供開始)

  • エンタープライズグレードのAIエージェントを効率的に設計、デプロイ、スケーリングするためのサービス。

  • 複数の専門エージェントを連携させ、複雑なビジネスタスクを自動化するワークフローの構築を支援します。

エージェント型検索の高度化 (Azure AI Search)

  • エージェントによる情報検索を最適化する新しい宣言的クエリエンジンがプレビュー提供されます。会話履歴を理解し、エージェントのニーズに合わせた検索結果を生成します。

Copilot Studioとの連携深化

  • Azure AI Foundryが提供する1,900以上の基盤モデルやファインチューニングされたモデルを、Microsoft Copilot Studioで構築するエージェントから利用しやすくなります。

  • Azure AI Searchのベクトル化インデックスを活用した高度なRAG (Retrieval Augmented Generation) の実装を支援します。

ローカル開発環境のサポート (Azure AI Foundry Local)

  • Windows 11およびMacOS上で、AIモデルの推論、モデルとエージェントのサービスとしての実行、モデルプレイグラウンドを通じたインタラクティブな開発を可能にするFoundry Localがプレビュー提供されます。

統合されたセキュリティ機能

  • 「Prompt Shields」(一般提供) や「Spotlighting」(プレビュー) といったAzure AI Content Safetyの機能により、AIシステムを保護します。

  • Microsoft Defender for Cloudとの統合 (プレビュー) により、AIワークロードのセキュリティ体制を監視・強化します。

提供状況

  • Azure AI Foundry Agent Service:一般提供が開始されています。

  • Azure AI Searchのエージェント型検索エンジン:プレビュー提供中です。

  • Azure AI Foundry Local:プレビュー提供中です。

  • 各セキュリティ機能:一部は一般提供、一部はプレビューとなっています。


「MCPサーバー」への対応

Microsoft Build 2025では、MCP (Model Context Protocol) サーバーへの対応が、エージェント型ウェブの実現に向けた重要なステップとして強調されました。

MCPは、AIエージェントがアプリケーションやサービスと安全かつ標準化された方法で情報をやり取りするためのオープンなプロトコルです。

MCPの重要性とMicrosoftの取り組み

  • エージェント間の相互運用性: MCPは、異なる開発者や企業によって作られたAIエージェントやサービスが、互いに「会話」し、連携して動作するための共通言語の役割を果たします。これにより、より複雑で高度なタスクを、複数のエージェントが協調して実行できるようになります。

  • オープンなエコシステムの促進: Microsoftは、MCPをエージェント型ウェブにおける標準プロトコルの一つとして推進しており、自社の主要なプラットフォーム(Microsoft 365、Azure AI Foundry、Windowsなど)でMCPサーバーとしての機能を提供、またはMCPクライアントとしての連携を強化しています。

  • Windowsネイティブサポート: 特に注目すべきは、Windows OS自体がMCPサーバーをネイティブにサポートする発表です。これにより、Windows上のファイルシステム、設定、さらには個々のアプリケーションが持つ機能(App Actions)までもが、AIエージェントからMCPを通じてアクセス可能になります。

  • セキュリティと制御: MCPサーバーへのアクセスはユーザーの明示的な許可に基づいて行われ、セキュリティとプライバシーが確保されます。WindowsにはMCPレジストリが導入され、検証済みの安全なMCPサーバーのみがエージェントから発見・利用できるようになります。

キーノートでは、このMCP連携の具体的なデモとして、GitHub Copilot (エージェントモード) がFigmaのMCPサーバーと連携する様子などが紹介されました。

開発者がVS Code内でGitHub Copilotに対し、「Figmaで選択しているデザインのようにウェブサイトを更新してほしい」と指示すると、CopilotはFigmaのMCPサーバーに接続し、デザインの詳細情報を取得。その情報に基づいて、ウェブサイトのレイアウト、スタイル、コンテンツを自動的に更新


その他の注目アップデート

今回のMicrosoft Build 2025では、上記以外にも注目すべき発表がありました。

  • NLWeb (オープンプロジェクト)
    ウェブサイトが自然言語による会話型インターフェースを容易に提供できるようにする新しいオープンプロジェクトです。これは、エージェントがウェブコンテンツとより深く対話するための基盤となる可能性を秘めています。NLWebのエンドポイントはModel Context Protocol (MCP) サーバーとしても機能し、AIエージェントによるウェブサイトの発見とアクセスを容易にします。

  • Microsoft Discovery (エンタープライズエージェントプラットフォーム)
    科学研究や発見のプロセスを加速するための、エージェント型AIプラットフォームです。アイデアの生成からシミュレーション、結果の分析に至るまで、専門化されたAIエージェントのチームが研究者を支援し、科学的な成果をより迅速かつ大規模に、高い精度で導き出すことを目指します。

まとめ

Satya Nadellaは「オープンなエージェンティック・ウェブ」を構築し、AI同士が協調し合う新時代を切り開くと強調していました。

Microsoft Build 2025でも、MCP(Model Context Protocol)のネイティブ対応やAzure AI Foundryのマルチモデル対応など、エコシステム全体をオープン化しようとする流れがはっきり見えるキーノートでした。

これから数日間はGoogle I/Oをはじめとする各社の大型AI発表が続き、OpenAIの追加リリースにも期待がかかります。今回のMicrosoftの動きによって、AIの相互運用性と拡張性がさらに加速しそうです。

今後、開発者はより柔軟で連携性の高いAI技術を使えるようになるでしょう。新たなアプリやサービスが次々と生まれ、AI業界全体が一層ダイナミックに進化する気配を感じます。

Microsoft Build 2025 公式情報