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サッポー詩片AGIラボ現代日本語訳

この本の概要

サッポー詩片

AGIラボ現代日本語訳

紀元前6世紀、レスボス島の詩人サッポーが遺した歌のかけらを集める。恋の炎に灼かれる身体、アプロディーテーへの祈り、婚礼の夜のざわめき、娘クレーイスへの愛——古代ギリシア最高の抒情詩人と讃えられた声が、167の断片から立ちのぼる。

『サッポー詩片』の表紙
『サッポー詩片』の表紙

この本の概要

サッポー詩片

AGIラボ現代日本語訳

紀元前6世紀、レスボス島の詩人サッポーが遺した歌のかけらを集める。恋の炎に灼かれる身体、アプロディーテーへの祈り、婚礼の夜のざわめき、娘クレーイスへの愛——古代ギリシア最高の抒情詩人と讃えられた声が、167の断片から立ちのぼる。

0110

第1部 サッポー詩形の歌

断片1

彩り豊かな玉座の、不死なるアプロディーテーよ。ゼウスの娘、たくらみを織る方よ、あなたに祈る。女王よ、苦悶と悲嘆でわたしの心を打ちひしがないでほしい。そうではなく、ここへ来てほしい。かつて遠くからわたしの声を聞きつけ、耳を傾け、父の黄金の館をあとにして、車に軛をかけ、来てくれたことがあったのなら。美しくすばやい雀たちがあなたを乗せて引き、黒い大地のうえを、翼をしきりに羽ばたかせながら、天から中空を貫いて降りてきた。たちまち雀たちは着いた。すると幸いなるあなたは、不死の面に微笑みを浮かべて尋ねた。今度は何がわたしの身に起きたのか、なぜまた呼ぶのか、この狂おしい心でわたしが何をいちばん願っているのか、と。「今度はどんな美しいひとを、ペイトーに導かせて、あなたへの愛に引き寄せようというのか。サッポーよ、誰があなたにひどい仕打ちをするのか。たとえいま逃げても、その人はすぐに追うようになる。贈り物を受け取らなくても、やがて自分から贈るようになる。愛していなくても、心ならずも、すぐに愛するようになるのだから」。いまもまた、わたしのもとへ来てほしい。つらい思い煩いから解き放ってほしい。この心が遂げたいと焦がれるすべてを、遂げさせてほしい。そしてあなた自身が、わたしと共に戦う味方でいてほしい。

断片2

あの人は、神々にも等しい人だとわたしには思える。あなたの正面に座って、すぐそばで、あなたの甘やかな声と、恋しさを誘う笑いに聞き入っているあの人は。それこそが、この胸のうちで心をふるわせるのだ。ほんの一目あなたを見るだけで、もう声はひとつも出てこない。舌は砕けて動かず、たちまち細い炎が肌の下を走り、目には何も見えず、耳はごうごうと鳴る。汗は流れ落ち、震えが全身をつかまえて、わたしは草よりも青ざめ、狂おしさのあまり、死んだ人とほとんど変わらないように見える。それでも、すべてをあえて忍ばなくてはならない。貧しい者でさえ……

喉と胸に手を当て、親しく語らう二人を見つめる女性
声は失われ、細い炎が肌の下を走る。

断片3

美しい月をめぐる星々は、たちまちその輝く姿を隠してしまう。満ちた月が、銀の光でこの大地をくまなく照らすときには。

断片4

そしてそのまわりでは、冷たい風が林檎の枝々を渡ってさやさやと鳴り、震える葉むらから、眠りが流れくだってくる。

断片5

来てほしい、キュプリスよ。そして黄金の杯に、宴の喜びをやわらかに混ぜ合わせたネクタルを注いで、めぐらせてほしい。

断片6

それともあなたを、キュプロスとパポスが、あるいはパノルモスが迎えているのか。

断片7・8

けれどあなたのためにわたしは、白い山羊の仔を祭壇へ引いていこう……そしてあなたのために、酒も注ぎ添えよう。

断片9

黄金の冠をいただくアプロディーテーよ、どうかこの籤運を、わたしが引き当てられるように。

断片10

その方々こそ、おのれのわざをわたしに授けて、誉れある者にしてくれたのだ。

断片11

さあ、この楽しい歌を、わたしの女友だちたちのために、いまうつくしく歌おう。

断片12

わたしが良くしてやる相手にかぎって、誰よりもわたしを傷つけるのだから。

断片13

けれどわたしは、ひとが恋い焦がれるそのものを……

断片14

美しいあなたたちへ向けるわたしの思いは、変わることがない。

断片15

そしてそのことを、わたしはわが身のうちでよく知っている。

断片16

けれど鳩たちの心は冷たくなり、翼をわきへ垂らしてしまった。

断片17

……わたしの涙のしたたるがままに。その涙も、もろもろの憂いも、吹き荒れる風が運び去ってくれるように。

断片18

ついいましがた、黄金の履物の暁の女神が、わたしを……

断片19

彩り模様の革紐が、その足を包んでいた。リュディアの美しい手わざの品だった。

断片20

ありとあらゆる色合いを、混ぜ合わせて……

断片21

あなたはわたしを、忘れてしまっている。

海からの光が差し込む無人の部屋に、身体の窪みを残す寝具
あなたはわたしを、忘れてしまっている。

断片22

それとも、わたしよりも、ほかの誰かを愛しているのか。

断片23

あなたたちなど、わたしには何ものでもない。

断片24

あなたたちが望んでいるかぎりは……

断片25

わたしは恋い焦がれ、そして追い求める……

断片26

黄金の玉座のムーサよ、うたっておくれ。美しい女たちの住まう豊かな国、テオスの気高い老翁が、あれほど快くうたっていた、あの歌を。

0210

第2部 ダクテュロス韻律の歌

断片27

怒りが胸のうちに広がるときには、いたずらに吠えたてぬよう、舌を守るがいい。

0310

第3部 アルカイオス詩形の歌

断片28

あなたの望みが善いもの、美しいものであったなら、そして舌が悪しき言葉を掻き立てていなかったなら、恥があなたの目を覆うことはなく、あなたはそのことを正直に語っていただろうに。

0410

第4部 グリュコン脚とアルカイオス脚の混合韻律の歌

断片29

友よ、こちらを向いてまっすぐに立ち……その瞳に宿る優美を、あらわに見せておくれ。

0510

第5部 コリアンボス韻律の歌

断片30

そして黄金のひよこ豆が、岸辺に生い茂っていた。

断片31

レートーとニオベーは、この上なく睦まじい友であった。

断片32

わたしは思う、のちの世にも、誰かがわたしたちを思い出すだろうと。

断片33

わたしはかつてあなたを愛していた、アッティス、遠い昔に。

断片34

あなたはわたしの目に、小さくて器量の悪い子どもに見えたものだ。

断片35

愚かな女よ、指輪ひとつを誇りにするのはおよし。

断片36

どうしたらよいのか、わからない。心がふたつに分かれている。

断片37

この二本の腕で、空に触れようとは思わない。

断片38

母のあとを追う幼な子のように、わたしは羽ばたいている。

断片39

春の使い、恋しさに満ちた声のサヨナキドリ。

断片40

いままたエロースが、手足を萎えさせるあの者が、わたしを揺さぶる。甘くて苦い、抗いようのない生きもの。

断片41

けれどアッティスよ、あなたにはわたしを思うことが疎ましくなった。そしてアンドロメダのもとへ飛んでいく。

断片42

いままたエロースがわたしの心を揺さぶる。山で樫の木々に吹き落ちる風さながらに。

断片43

夜どおし、眠りがその目を捉えて離さないとき……

断片44

そして膝を覆う紫の布を……それさえあなたは蔑ろにするのだろうが、わたしはポカイアから贈ったのだ、膝を飾る貴い贈り物として。

断片45

さあ、神々しい竪琴よ、わたしのために声をもつものとなっておくれ。

断片46

そして、やわらかな首のまわりに、やわらかく編んだ花冠を……

海光のそばで、女性の首に編んだ花冠を置く二つの手
やわらかな首のまわりに、やわらかく編んだ花冠を。

断片47

ゲローよりも少女をかわいがる者。

断片48

ゴルゴーにはもう、すっかり倦み果てて……

断片49

誇り高い王宮の……

断片50

けれどわたしは、やわらかな敷き布のうえに手足をゆだねる。

断片51

そこでは神々の酒アムブロシアが鉢に混ぜ調えられ、ヘルメースが柄杓を取って神々に注いでまわった。みな盃を手に取り、神々への注ぎの酒をささげて、花婿にあらんかぎりの幸いを祈った。

断片52

月は沈み、プレイアデスも沈んだ。夜は今がなかば、時はただ過ぎてゆく。それでもわたしは、ひとりで眠る。

断片53

月は満ちて姿をあらわし、女たちは祭壇をめぐるように立ちならんだ。

断片54

こうしてクレタの女たちは、やさしい足どりで、美しい祭壇のまわりを拍子にのって踊ったものだ。草のほそやかでやわらかな花を踏みしだきながら。

断片55

またしてもわたしは、厚い衣のまま、しなやかに跳んだのだ。

断片56

人の言うには、レーダはむかし、ヒュアキントスの花のかげに隠された卵を見つけたのだと。

断片57

そして黒い瞳をした、夜の子なる眠りが……

断片57A

黄金のように輝く、アプロディーテーの侍女よ。

断片58

アンドロメダは、みごとな報いを受けている。

断片59

サッポーよ、なぜ幸いに満ちたアプロディーテーを歌うのか。

断片60

いざ来たれ、たおやかなカリスたち、髪美しいムーサたちよ。

断片61

甘やかな声の乙女。

断片62

キュテレイアよ、たおやかなアドーニスが死んでゆく。わたしたちはどうすればいいのか。乙女たちよ、胸を打て、衣を引き裂け。

断片63

ああ、アドーニスよ。

断片64

紫の外衣を身にまとい、天から降りてくる……

断片65

来たれ、薔薇色の腕の清らかなカリスたち、ゼウスの娘たちよ。

断片66

だがアレースは言う、力ずくでもヘーパイストスを引き立ててこようと。

断片67

おまえは数えきれないほどの杯を飲み干す。

断片68

だが、おまえは死んで横たわるままだろう。その時も、のちの世にも、おまえを思い出す者はいない。ピエリアの薔薇に、おまえはあずかっていないのだから。ハーデースの館でも人知れず、影のような死者たちのあいだを、ひらひらとさまよいゆくだろう。

遠い薔薇の光に届かず、暗がりへ薄れてゆく女性の姿
ピエリアの薔薇にあずからず、影のようにさまよう。

断片69

おまえほどの知恵をそなえた乙女は、この先いつの時にも、日の光を仰ぐことはあるまいと思う。

断片70

どこの田舎娘がおまえの心を惑わせているのか。くるぶしの上に衣の裾をさばくすべも知らない娘が。

断片71

わたしはギュアラのヘーローを、あの俊足の娘を教えたのだ。

断片72

けれどわたしは、恨みを抱えつづける性ではない。静かな心を持っているのだ。

断片73

けれど、花の盛りのおとめたちは花冠を編んでいた。

断片74

あなたと、わたしの従者であるエロースとが……

断片75

けれどわたしを想ってくれるのなら、もっと若い者を床の伴に選ぶがいい。年上のわたしは、若いあなたと連れ添って暮らすことに、とても耐えられないのだから。

断片76

ムナシディカは、たおやかなギュリンノよりも姿が美しい。

断片77

エランナよ、あなたほどつれない人には、どこでも出会ったことがない。

断片78

ディカよ、やわらかな手でディルの若枝を編み合わせ、愛らしい髪に花冠を置くがいい。美しい花を身にまとう者こそ、至福の女神たちの恵みを受けて先に立つ。女神たちは、花冠のない者からは顔をそむけてしまうのだから。

断片79

わたしは、たおやかな優美を愛する。わたしにとって恋は、太陽の輝きと美しさをその身に受けている。

断片80

そしてわたしは、しとねを敷きのべよう。

断片81

徳よ、あなたを伴わない富は危うい隣人だ。ふたつがまじり合ってこそ、幸いの極みとなる。

0610

第6部 さまざまな韻律の歌

断片82

そしてあなた自身も、カリオペーよ……

断片83

たおやかな女友達の胸に抱かれて、眠るがいい。

断片84

ここへ、いまふたたび、ムーサたちよ。黄金の……をあとにして。

断片85

わたしには美しい娘がいる。黄金の花にも似た姿の、いとしいクレーイス。あの子に代えるなら、リュディアのすべても、うるわしいレスボスさえも、わたしは望まない。

断片86

ポリュアナクスの娘よ、幾重にも、ごきげんよう。

0710

第7部 イオニコス韻律の歌

断片87

夢のなかで、わたしはキュプロス生まれの女神と語り合った。

断片88

パンディオーンの娘、愛らしい燕よ、なぜわたしを悩ませるのか。

断片89

そして彼女は、きめこまやかな毛羽立つ布に、身をすっぽりと包んだ。

断片90

やさしい母よ、わたしはもう機を織ることができない。たおやかなアプロディーテーの御心のままに、あの少年への恋しさに打ちひしがれて。

機の前でうつむき、指から赤い糸を落とす若い女性
恋しさに打ちひしがれ、もう機を織ることができない。

0810

第8部 祝婚歌

断片91

梁を高々と上げよ、大工たちよ。ヒュメナイオスよ。花婿がアレースさながらにやって来る。ヒュメナイオスよ。丈高い男よりも、はるかに丈高く。ヒュメナイオスよ。

断片92

レスボスの歌びとが異国の人々のあいだで抜きん出るように、ひときわ高くそびえ立って。

断片93

甘い林檎が枝の先で赤く色づくように。高い枝の、そのいちばん先で。林檎摘みたちはそれを見落とした。いや、見落としたのではない、手が届かなかったのだ。ああ、美しい人、ああ、愛らしい人よ。

断片94

山のうえで羊飼いたちが足で踏みしだいたヒヤシンスが、地に紫の色をにじませて翳るように。

断片95

宵の明星ヘスペロスよ、かがやく朝が散らしたすべてを、あなたは連れ帰す。羊を連れ帰し、山羊を連れ帰し、子どもを母のもとへ連れ帰す。

断片96

わたしは、とこしえに乙女のままでいるだろう。

断片97

与えよう、と父は言う……

断片98

門番の足は七尋もあって、履いているサンダルは牛五頭分の革、靴屋十人が精を出して仕上げたものだ。

断片99

幸せな花婿よ、あなたが祈ったとおりに婚礼はいま成しとげられ、祈ったとおりの乙女があなたのものになった。

断片100

あなたの姿は優美で、瞳は……蜜のように甘い。愛が、慕わしいその顔いちめんにそそがれている。……アプロディーテーは、あなたを誰にもまして重んじたのだ。

断片101

姿の美しい人は、見るかぎりでは善い人であり、善い人はやがて美しい人にもなるだろう。

断片102

わたしはいまも、乙女のころを恋しく思っているのだろうか。

断片103

花嫁は喜びに満ちてやって来る。花婿も喜ぶがいい。

断片104

親しい花婿よ、あなたを何になぞらえたらよいだろう。しなやかな若枝になぞらえるのが、いちばんふさわしい。

断片105

幸あれ、花嫁よ。誉れある花婿よ、幾重にも幸あれ。

断片106

花婿よ、これほどの娘は、ほかにひとりもいなかったのだから。

断片107・108

歌え、ヒュメーナイオスを。ああ、アドーニスを。

断片109

「乙女のときよ、乙女のときよ、わたしを置いてどこへ行ってしまうの」「もうあなたのもとへは帰らない、もう二度と帰らない」

断片110

愚かな人よ、その堅い心を萎えさせるな。

断片111

あの人は、おのれの目には……

断片112

卵よりも、ずっと白い。

断片113

わたしには、蜜もいらなければ蜂もいらない。

断片114

小石の山を動かすな。

断片115

あなたは、わたしたちを焦がす。

断片116

しずくのしたたる手ぬぐい。

断片117

彼女はその人を、わが子と呼んだ。

0910

第9部 碑銘詩

断片118

乙女たちよ、わたしはもの言えぬ身ながら、尋ねる人があればこう告げる。足もとに、疲れを知らぬ声を据えているのだから。わたしをレートーの娘アイトピアに捧げたのは、サオナイアデースの子ヘルモクレイデースの娘、あなたの仕え女アリスタ。女たちの女王よ、どうかこの人を喜び、快くわれらの一族に誉れを与えたまえ。

断片119

これはティマスの塵。婚礼を待たずに世を去り、ペルセポネーの暗い臥所に迎えられた。その人が滅びたとき、同じ年ごろの娘たちはみな、研ぎたての刃で、頭の愛らしい髪を切り落とした。

切った髪を布の上に置き、肩を寄せ合ってティマスを弔う三人の女性
同じ年ごろの娘たちは、愛らしい髪を切ってティマスを弔った。

断片120

漁師ペラゴーンの墓に、父メニスコスは魚捕りの籠と櫂を据えた。つらい暮らしの形見として。

1010

第10部 補遺

断片121

花を摘む、このうえなくやわらかな乙女を……

断片122・123

竪琴よりもはるかに甘い調べ、黄金よりもなお金色に。乳よりも白く、水よりもやわらかく、竪琴よりも調べ美しく、馬よりも誇らかで、薔薇よりもたおやかで、上等の衣よりもやわらかく、黄金よりも尊い。

断片124

デメトリオスは言う——「それゆえサッポーは、美と恋と春とカワセミを歌うとき、流麗にして甘美である。あらゆる美しい言葉が彼女の詩には織り込まれ、そのうえ彼女みずから作り出した言葉もある」。

断片125

エロースは甘く苦いもの、痛みを贈る者、物語を編む者。

断片126

わたしのいとしい人。

断片127

かがやきは、見る者の目を損なうことなく……ヒヤシンスの花のように……

断片128

パセリの冠を……

断片129

薔薇色の腕、きらめく瞳、美しい頬、蜜のような声。そして、やわらかな声の乙女たち……

断片130

この夜が、わたしのために二倍の長さになりますように。

断片131

岬の名はアイガー……

断片132

アポロニオスの註釈者は言う——「アポロニオスはエロースをアプロディーテーの子と呼ぶが、サッポーは大地と天の子と呼ぶ」。テオクリトス『牧歌』に付された序は言う——「サッポーはエロースをアプロディーテーと天の子と呼んだ」。そしてパウサニアスは言う——「エロースについて、レスボスのサッポーは互いに合わない多くのことを歌った」。

断片133

宵の明星ヘスペロスよ、あなたはすべての星のなかで最も美しい。薔薇色の恋にあふれる花嫁よ、パポスの女神のこの上なく美しい似姿よ、臥所へ行きなさい、寝床へ行きなさい。やさしく戯れて、花婿には甘いひとであれ。宵の明星ヘスペロスが、よろこび行くあなたを導いてくれますように。銀の玉座の、婚姻の女神ヘーラーを敬うあなたを。

海上の夕星の下、薔薇色の衣の花嫁が灯りの中の手へ歩み寄る
宵の明星ヘスペロスが、よろこび行く花嫁を導く。

断片134

アポロニオスの註釈者は言う——「セレーネーの恋の物語は、サッポーが語り、ニカンドロスも『エウローパ』第二巻で語っている。セレーネーは、カリアのラトモス山の同じ洞窟で、エンデュミオーンのもとへ通ったと言われる」。

断片135

アプロディーテーの娘、ペイトーよ……

断片136

ムーサに仕える者の家に、嘆きの声があってはならない。それはわたしたちにふさわしくない。

断片137

死は悪しきもの。神々がそう定めた。もし死がよいものであったなら、神々もまた死んでいただろう。

断片138

アテナイオスは言う——「ナウクラティスは、たぐいまれな美しさで名高い遊女たちを生んだ。ドーリカもその一人で、美しいサッポーの兄カラクソスが商用でナウクラティスへ渡ったとき、彼に愛された女である。サッポーは詩のなかで、彼女が兄から多くを奪い取ったと責めている。ヘロドトスは彼女をロドーピスと呼ぶが、それはデルポイに名高い鉄串を奉納したドーリカが、ロドーピスとは別人だと知らなかったからである」。ヘロドトスは言う——「ロドーピスはサモスのクサンテスに連れられてエジプトへ来た。稼ぎのために来た彼女は、ミュティレネのカラクソス、すなわちスカマンドロニュモスの息子で詩人サッポーの兄である男によって、大金で身請けされた。こうして自由の身となったロドーピスはエジプトにとどまり、たいそう美しかったので、遊女としては大きな富を築いた。もっとも、あのミュケリノスのピラミッドのようなものを建てるには、とうてい足りない。その富の十分の一は今日でも望む者なら誰でも見ることができるのだから、彼女に途方もない富を帰する必要はない。ロドーピスはギリシアに自分の記念を残したいと願い、誰も考えついて神殿に奉納したことのないような品を作らせ、みずからの記念としてデルポイに捧げることにした。そこで富の十分の一で、その額が許すかぎり多くの、牛を焼くための鉄串を作らせてデルポイへ送った。それらは今も、キオス人が奉納した祭壇の後ろ、神殿の向かいに積み上げられている。ナウクラティスの遊女はおしなべてたいそう美しい。第一に、ここに語ったこの女は、ギリシア人がみなロドーピスの名を知るほどに名高くなったし、その後にはアルキディケという名の女が、前の女ほど噂にはのぼらなかったが、ギリシア中に名を知られた。カラクソスはといえば、ロドーピスを身請けしたのちミュティレネへ帰り、サッポーは歌のなかで兄を手ひどく嘲った」。ストラボンは言う——「あの遊女の墓は、恋人たちが建てたと言われる。抒情詩人サッポーは彼女をドーリカと呼ぶ。彼女はサッポーの兄カラクソスに愛された。カラクソスはレスボスの葡萄酒をナウクラティスの港へ運んで商っていた。ロドーピスと呼ぶ者もいる」。また別の書き手は言う——「サッポーとヘロドトスが伝える美しい遊女ロドーピスは、エジプトのナウクラティスの女であった」。

断片139

アテナイオスは言う——「美しいサッポーは、弟のラリコスが公会堂でミュティレネの人々のために酌をつとめたことを、いくつもの詩で讃えている」。『イーリアス』の註釈者は言う——「サッポーも言うように、生まれのよい美しい若者が酒を注ぐのが習わしだった」。

断片140

パライパトスは言う——「パオーンは小舟と海で暮らしを立てていた。海峡には渡し場があったが、誰からも不満は出なかった。彼は正しい人で、持てる者からしか取らなかったからだ。その人柄はレスボスの人々のあいだで評判だった。女神——人々はアプロディーテーを『女神』と呼ぶ——はこの男をよしとし、年老いた女の姿をまとって、パオーンに船で渡してほしいと頼んだ。彼はすぐさま応じて彼女を向こう岸へ運び、何も求めなかった。そこで女神はどうしたか。男の姿を変え、若さと美しさを取り戻させたという。これが、サッポーが幾度も歌に詠んだ恋の相手、あのパオーンである」。

断片142

黄金はゼウスの子。蛾も虫も、これを食い尽くすことはない。

断片143

アウルス・ゲッリウスは言う——「ニオベーの子らを、ホメロスは息子六人と娘六人、エウリピデスはそれぞれ七人、サッポーは九人ずつ、バッキュリデスとピンダロスは十人ずつと言う」。

断片144

セルウィウスは『アエネーイス』に注して言う——「テーセウスは七人の少年と七人の乙女を、みずからとともに救い出したと信じさせたい者たちがいる。プラトンは『パイドン』で、サッポーは抒情詩で、バッキュリデスはディテュランボスで、エウリピデスは『ヘラクレス』でそう語っている」。

断片145

セルウィウスは『牧歌』に注して言う——「イアペトスとクリュメネーの子プロメーテウスは、人間を造ったのち、ミネルウァの助けを借りて天へ昇り、小さな松明を太陽の車輪にかざして火を盗み、人間に示したという。これに怒った神々は、地上に二つの災い、熱病と疾病を送った。サッポーとヘシオドスがそう語っている」。

断片146

ピロストラトスは言う——「サッポーは薔薇を愛し、いつも何かしらの言葉で讃えて飾り、美しい乙女たちを薔薇にたとえている」。

断片147

ヒメリオスは言う——「あなたのその贈り物は、いまや、ムーサたちを率いる神その人の贈り物になぞらえねばならない。サッポーとピンダロスは歌のなかでこの神を黄金の髪と竪琴で飾り、白鳥の車を連ねてヘリコンへ伴い、ムーサたちやカリスたちとともに踊らせる。あるいはまた、ムーサに霊感を得た詩人たちは、春がはじめてひらめき出るころ、バッコスの神——竪琴はディオニューソスをそう呼ぶ——に春の花と蔦の房で冠をかぶせ、あるときはカウカソスの頂とリュディアの谷へ、あるときはパルナッソスの断崖とデルポイの岩へと導く。神は跳びはねながら、従う信女たちにエウイオスの調べの音頭を与える」。

断片148

おおやけのよきもの

断片149

悪を知らぬ人

断片150

高い支柱に這わせた葡萄の蔓

断片151

草地に水を引く溝

断片152

あかつき

断片153

女王なるあかつき

広い余白の下で、海の水平線を薔薇色と金色に染める最初の朝光
女王なるあかつき。

断片154

バローモスとサルビトス

断片155

女の衣

断片156

化粧箱

断片157

ヘクトール

断片158

歩いて渡れる

断片159

わたしが導けますように

断片160

上から吹き下ろす風

断片161

危険

断片162

メーデイア

断片163

没薬

断片164

ムーサたちの

断片165

ナトロン

断片166

多くを知る者に

断片167

……スキタイの木。人々はそれに羊毛を浸してマルメロ色に染めあげ、髪を黄いろに染める。

断片168

どんな眼で……

断片170

黄金のくるぶしをもつ

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