...
プタハヘテプの教訓AGIラボ現代日本語訳

この本の概要

プタハヘテプの教訓

AGIラボ現代日本語訳

「世界最古の書物」と呼ばれる、約4400年前のエジプトの処世訓。老いた宰相プタハヘテプが、王の許しを得て息子に語り残した43の格言——学識を鼻にかけるな、無知な者とも賢者と同じように語れ、指導者になったら聞くことを学べ、強欲はあらゆる悪の束である。議論の作法、上司との付き合い方、部下の遇し方、家庭のおさめ方。現代の自己啓発書が語ることのほぼすべてが、ピラミッドの時代にすでに書かれていた。主要写本のプリス・パピルスはパリの国立図書館に所蔵されている。

『プタハヘテプの教訓』の表紙
『プタハヘテプの教訓』の表紙

この本の概要

プタハヘテプの教訓

AGIラボ現代日本語訳

「世界最古の書物」と呼ばれる、約4400年前のエジプトの処世訓。老いた宰相プタハヘテプが、王の許しを得て息子に語り残した43の格言——学識を鼻にかけるな、無知な者とも賢者と同じように語れ、指導者になったら聞くことを学べ、強欲はあらゆる悪の束である。議論の作法、上司との付き合い方、部下の遇し方、家庭のおさめ方。現代の自己啓発書が語ることのほぼすべてが、ピラミッドの時代にすでに書かれていた。主要写本のプリス・パピルスはパリの国立図書館に所蔵されている。

0103

老いた宰相の願い

都の長官にして宰相のプタハヘテプは言った。「王子なるわが主よ、人生の終わりが近づいた。老いがわが身に降りかかり、衰えが訪れ、幼児のような惑いが戻ってくる。老いた者は日ごとに苦しみのうちに横たわる。目は小さくなり、耳は遠くなる。力は衰え、心は休まらない。口は黙して言葉を発せず、心は止まって昨日のことも思い出せない。骨は全身にわたって痛み、善いものが悪いものに変わる。あらゆる味わいが失われる。老いは人にこうしたことをもたらす。何事につけても災いである。鼻はふさがり、弱さのために、立っていても座っていても息ができない。それゆえ、あなたのしもべたるわたしに命じて、この統治の権をわが息子に譲らせてほしい。昔の人々の教えに耳を傾けた者たち、神々に聞き従った者たちの言葉を、息子に語らせてほしい。どうかこのことをお認めいただきたい。分別ある人々の間から罪が退けられ、あなたが国々を照らされるように。」神なる王は言った。「それならば、昔からの言葉を息子に教えよ。彼が王侯の子らにとって驚嘆すべき手本となり、彼らが参上して共に耳を傾けるように。彼らの心をすべてまっすぐにせよ。倦ませることなく、息子と語り合うがよい。」

杖にすがる老いた宰相が、玉座の王に願い出ている
老いを語り、教えを書き残す許しを乞うプタハヘテプ

ここに始まるのは、美しい語りの格言である。世襲の長、聖なる父、神に愛される者、王の実の長子、都の長官にして宰相のプタハヘテプが、無知な者に正しく美しく語る術を教えるために述べたもの。これに従う者の誉れとなり、これに背く者の恥となる。彼は息子に言った。

0203

四十三の格言

第1訓

学識があるからといって驕るな。無知な者とも、賢者と語るのと同じように語り合え。技芸に限りはなく、あらゆる長所を兼ね備えた職人はいないからだ。美しい言葉は、奴隷の娘たちが小石の間に見つけるエメラルドよりも稀である。

川辺で小石をすくう少女が、緑の石を一粒つまみ上げている
美しい言葉は、小石の間に見つかるエメラルドよりも稀である

第2訓

議論を仕掛けてくる者に出会い、それが善意の、自分より賢い相手であれば、腕を下ろし、身を低くせよ。相手が同意しなくても腹を立てるな。悪しざまに言うことを慎み、相手が語っている間はいっさい逆らうな。おまえを事情を知らぬ者として扱っても、おまえの謙虚さが相手の論難を打ち払ってくれるだろう。

第3訓

議論を仕掛けてくる者に出会い、それが対等の相手、自分の手の届く者であれば、悪いことを口にしたとき黙っていてはならない。そうすればおまえのほうが賢いことになる。聞いている者たちは大いに称賛し、おまえの名は貴人たちに良く知られるだろう。

第4訓

議論を仕掛けてくる者に出会い、それが貧しい者、つまり対等ではない相手であれば、身分が低いからといって見下すな。放っておけ。そうすれば相手はひとりでに行き詰まる。心を満足させるために問い詰めるな。目の前の相手に怒りをぶちまけるな。卑小な心の持ち主をやり込めるのは恥ずべきことだ。心にあることをそのまま行おうとするなら、貴人たちの退けるものとしてそれを抑えよ。

第5訓

もしおまえが指導者となり、多くの人々の行いを導く立場にあるなら、常に寛容であるよう努め、自らの行いに欠けるところがないようにせよ。真理は偉大であり、まっすぐな道を定める。オシリスの治世このかた、真理が覆されたことは一度もない。法を踏み越える者は罰せられる。踏み越えるのは強欲な者だが、失墜がその富を奪い去る。悪事の報いの季節は絶えることがないからだ。強欲な者は「自分の力で自分のために手に入れる」と言い、「許されているから手に入れる」とは言わない。しかし正義の境界は揺るがない。それこそ、人が父から受け継いで語り伝えるものである。

第6訓

人々を恐れさせるな。それもまた神が罰することだからだ。「そこに生きる道がある」と言う者がいるが、その者は口にする糧を奪われる。「そこに力がある」と言い、「目に映るものは自分のために奪い取る」と言う者がいる。そのように語る者は打ち倒される。何かを手にするのは、持たざる者に与える者であって、人々を怯えさせる者ではない。神が命じたことは、必ずそのとおりに起こるからだ。だから慈しみの家に住め。そうすれば人々は自ら進んで贈り物を携えて来るだろう。

第7訓

自分より偉い人の客となったなら、与えられるものを受け取り、口に運べ。目の前の主人を見るにしても、何度も視線を突き刺すな。じっと見つめるのは魂の忌むところである。話しかけられるまで口を開くな。何が相手の気に障るかは分からないからだ。問われたときに話せ。そうすればおまえの言葉は相手の心にかなうだろう。食卓を前にした貴人は、心の動くままにそれを分け与える。気に入った者に与える。それが晩餐の習わしである。その手を導くのは彼の魂だ。与えるのは貴人であって、下位の者が自力で手に入れるのではない。こうしてパンを食べることは神の摂理のもとにある。それに異を唱えるのは無知な者である。

第8訓

貴人から貴人への使者となったなら、遣わした者の意向のとおりに正確であれ。伝言は言われたとおりに伝えよ。言葉で敵意を生み、真実を曲げて貴人同士を争わせることのないよう警戒せよ。真実を踏み越えるな。また、王侯であれ農夫であれ、人が心を開いて語ったことを他言するな。それは魂の忌むところである。

第9訓

畑を耕したなら、その収穫は野で刈り取れ。神はおまえの手の中でそれを豊かにしてくれる。隣人の食卓で自分の口を満たすな……。悪知恵の働く者が富を持てば、鰐のように祭司たちからさえ盗む。

子のない者も妬んではならない。そのことで気落ちしたり、争いを起こしたりしてはならない。父というものは、偉大であっても悲しみを抱くことがあり、子を持つ母には、ほかの女より安らぎが少ない。まことに、人はそれぞれ神によって〔その運命へと〕造られる。神は部族の長であり、人は信頼して神に従うのである。

供物台に忍び寄る鰐。祭司たちは背を向けて気づいていない
悪知恵の働く者が富を持てば、鰐のように祭司たちからさえ盗む

第10訓

身分が低いなら、賢い人に仕えよ。そうすればおまえのすべての行いは神の前に良いものとなる。取るに足りない者と知っていた男が高い位に上がったなら、その過去を知っているからといって傲慢に接するな。位を得た者を、その者がなったものにふさわしく敬え。

見よ、富はひとりでにやって来るものではない。富には、それを望む者に対する定めがある。自ら奮い立って集めるなら、神はその者を栄えさせるが、怠けるなら罰する。

第11訓

生きている間は心に従え。命じられた以上のことをするな。心に従う時間を削るな。安らぎの時を奪われることは魂の忌むところである。家を保つのに必要な以上に、昼の時間を切り詰めるな。富を得たなら心に従え。疲れ果てていては、富も何の役にも立たない。

第12訓

賢者たらんと望むなら、神を喜ばせる息子をもうけよ。息子がおまえに倣ってまっすぐに歩み、おまえの仕事をきちんと整えるなら、その子にあらゆる善いことをしてやれ。おまえの息子であり、おまえ自身の魂から生まれた者だからだ。心をその子から引き離すな。さもなくば、自分の生んだ子がおまえを呪うことになる。だが、もし息子が心なく、おまえの示す行いの道を踏み外し、乱暴で、口から出る言葉がことごとく卑しいなら、打って、その物言いを正せ。命じられたことを軽んじる者たちから息子を遠ざけよ。息子を反抗させるのは、そういう者たちだからだ。導かれる者は道を誤らないが、方角を見失った者はまっすぐな道を見つけられない。

第13訓

評議の場にいるなら、常にその日の初めに定められた手順のとおりに動け。席を外すな。さもなくば追い出される。進み出て報告する備えを怠るな。発言した者の席は広い。評議の場は厳格な規則で動き、その計画はすべて秩序に従う。そこでの席に人を進ませるのは神であって、肘で押しのける者のためにそうされることはない。

列を作って座る役人たちの前で、一人が立って発言している
評議の場は厳格な規則で動き、その計画はすべて秩序に従う

第14訓

人々の間にあるなら、自分のために愛を作れ。愛は心の初めであり終わりである。進むべき道を知らぬ者は、おまえを見て心の内でこう言うだろう。「身を正しく処する者は富の持ち主となる。あの振る舞いを手本にしよう。」おまえの名は、何も語らずとも良いものとなる。身は養われ、顔は隣人たちの間に見られ、足りないものは満たされるだろう。だが、心が腹に従う者は、愛の代わりに嫌悪を引き起こす。その心は惨めで、その体は鈍く、神に恵まれた者たちに対して横柄である。腹に従う者は敵を持つ。

第15訓

自分のしたことは隠さず報告せよ。主君との評議の席では、自分の行いを明らかにせよ。使者にとって、その報告に主君が「ああ、それは知っている」と答えないのは悪いことではない。主君の知っていることに、それが含まれていないからだ。主君が、そのことで使者は逆らうだろうと考えるなら、「わたしが語ったのだから、彼は黙るだろう」と考えるのである。

第16訓

指導者であるなら、自分の定めた規則を確実に実行させよ。そして、言葉がもはや通用しなくなる後の日々を心に留める者として、すべてを行え。恩恵を気前よく振りまきすぎるな。それは卑屈を招き、たるみを生む。

第17訓

指導者であるなら、訴える者の言葉に耳を傾けるとき、寛容であれ。相手が言おうと思ってきたことを、ためらわずに語れるようにし、その被害を取り除くことを心がけよ。自由に語らせよ。そうすれば、その者がやって来た用件は果たされる。もし訴える者が心を開くのをためらうなら、「被害に遭った者たちが訴え出ないのは、裁く者自身が不正を働いているからではないか」と言われることになる。よく教えられた心は、快く耳を傾けるものだ。

第18訓

入っていくどの家でも、主人としてであれ、兄弟としてであれ、友としてであれ、そこで友情を保ちたいと望むなら、どこへ行こうとも、女たちと交わることを警戒せよ。それが行われる場所で栄えるところはない。それに加わるのは賢明なことでもない。夢のように短いひとときの快楽のために、千人もの男が身を滅ぼしてきた。それによって死に至ることさえある。惨めなことだ。放埒に生きる者は、その行いのゆえに見放され、避けられる。欲望が満たされなければ、その者はいかなる掟も顧みない。

第19訓

自分の行いを善くしたいと望むなら、あらゆる悪意から身を守り、強欲という性質を警戒せよ。それは重い内なる病である。それに陥ることのないようにせよ。強欲は、舅たちと嫁の親族とを仲違いさせ、妻と夫を引き裂く。あらゆる悪を寄せ集めるものであり、あらゆる邪悪を束ねる帯である。だが正しい人は栄える。真理がその足跡に従って歩み、その人は真理のうちに住まいを構える。強欲の住みかにではない。

第20訓

分け前について強欲になるな。自分のものでないものを奪い取るな。隣人に対して強欲になるな。穏やかな人にとっては、称賛のほうが力よりも役に立つ。強欲な者は、人を動かす言葉を持たないがゆえに、隣人たちの間から手ぶらで帰る。ほんの少しの強欲でも、腹が冷めれば悔いが残る。

第21訓

賢くあろうと望むなら、家を整え、腕の中の妻を愛せ。その腹を満たし、背を装わせよ。香油はその身体の薬である。生きている間、妻の心を喜ばせよ。妻は、その主人に利益をもたらす所領だからだ。厳しくするな。力よりも優しさのほうが妻を従わせる。妻がため息をついて求めるもの、その目が見つめるものを与えよ。そうすれば妻をおまえの家にとどめておけるだろう……。

夫が妻の肩に腕を回して引き寄せ、二人が顔を向き合わせて座っている
家を整え、腕の中の妻を愛せ

第22訓

雇い人たちには、自分の持っているものの中から満足を与えよ。それは神の恵みを受けた者の務めである。実のところ、雇い人を満足させるのは難しい。ある者は「気前のよい人だ。何が出てくるか分からない」と言いながら、翌日には「きっちりした人(物惜しみする人)で、それで満足している」と思う。そして恩恵を示されると、雇い人たちは「出て行こう」と言う。惨めな雇い人たちの住む町に、平和は宿らない。

第23訓

過激な言葉を繰り返すな。それに耳を貸すな。それは怒りに熱した身体が発する言葉である。そのような言葉がお前に伝えられても聞き入れず、地面に目を落とせ。それについて語るな。そうすればお前の前にいる者は知恵を知るだろう。盗みを行うよう命じられたなら、その命令が自分から取り除かれるよう計らえ。それは法に照らして憎むべきことだからである。見ることを損なうのは、その上にかけられた覆いである。

第24訓

賢い人となり、主君のもとで評議の席に着く者となりたいなら、心を完全であることに向けよ。沈黙は多弁よりもお前の益となる。評議で発言する熟達者にどう反論されるかを考えよ。あらゆる仕事について口を出すのは愚かなことだ。お前の言葉に異を唱える者は、その言葉を試しにかけるからである。

第25訓

力ある身であれば、知識と穏やかさによって敬われるようにせよ。権威をもって語れ。すなわち、指図に従うかのようにではなく。高い地位にありながら卑屈な者は過ちに陥る。心を高ぶらせるな。低くされないためである。黙り込むな。ただし、口を挟むことと、熱した言葉で答えることには気をつけよ。それを遠ざけ、自らを制せよ。怒りの心は火のような言葉を吐き、近づいてくる穏やかな人に飛びかかって、その道を塞ぐ。

一日中勘定ばかりしている者は、幸せなひとときを過ごせない。一日中心を楽しませてばかりいる者は、家の備えができない。射手が的を射当て、舵取りが陸に着くのは、狙いを変えることによる。おのれの心に聞き従う者が、人に命じる者となる。

第26訓

貴人が忙しくしているときに妨げるな。すでに重荷を負っている者の心を圧迫するな。彼は自分を遅らせる者には敵意を向けるが、自分を愛する者には魂を開くからである。魂の采配は神の手にあり、神が愛するのは神の造ったものである。だから、激しい争いの後には自ら歩み出せ。敵対していた相手と和を結べ。愛を育てるのは、そのような魂である。

列柱と戸口のある中庭で、向かい合う二人の男が中央で手を握り合っている
激しい争いの後には自ら歩み出せ。敵対していた相手と和を結べ

第27訓

貴人には、その益となる事柄を教えよ。彼が人々に受け入れられるよう計らえ。彼の満足がその主人に届くようにせよ。お前の食い扶持は彼の意向にかかっているからだ。それによってお前の腹は満たされ、背には衣をまとうことになる。彼にお前の心を受け入れさせよ。そうすればお前の家は栄え、お前の名誉も――栄えることを望むなら――それによって栄えるだろう。彼はお前に親切な手を差し伸べ、さらに、お前の友人たちの胸にお前への愛を植えつけてくれるだろう。まことに、それは聞くことを愛する魂である。

第28訓

お前が神官の家の息子であり、民衆をなだめるために遣わされた使者であるなら、……一方に肩入れせずに語れ。「彼のやり方は貴族のやり方だ。言葉で片方の側をひいきしている」と言われないようにせよ。狙いを正確な裁きに向けよ。

第29訓

以前に寛大であったなら――人を正しく導くために許したのなら――その人には近寄るな。彼が〔そのことについて〕お前に黙っていたことを、最初の日を過ぎてから思い出させてはならない。

第30訓

取るに足りない身から偉くなり、貧窮の後に富を得て、町でその筆頭に立ち、有用な事柄の知識を備えて昇進が訪れたなら、蓄えの中に心を包み込むな。お前は神の授けた財の管理人となったのだ。お前が最後の者ではない。別の者がお前と肩を並べ、その者にも同じ〔運と地位〕が訪れるだろう。

第31訓

上役に、王宮におけるお前の監督者に、背をかがめよ。お前の家は彼の富に、お前の給金はその時季ごとの支払いにかかっているからだ。上役と争う者はなんと愚かなことか。人は、彼の好意があるあいだしか生きられないのだから。……

借家人の家から奪うな。友人の物を盗むな。お前の聞こえるところで彼に責め立てられ、心が挫かれることのないように。彼がそれを知れば、お前に害をなすだろう。友情の代わりに争うのは愚かなことだ。

第32訓

〔節制について〕。

第33訓

友の人柄を知りたいなら、その仲間の誰かに尋ねるな。彼とふたりだけで時を過ごせ。彼の身辺の事柄を損なわないためである。しばらくしてから彼と論じ合い、言葉を交わす機会にその心を試せ。彼が自分の来し方を語ったとき、それは、お前が彼を恥じるか、それとも彼と親しくなるかを決める機会となる。彼が語り始めたときに身構えるな。見下すように答えるな。彼から身を引くな。話がまだ終わっていない者、力になってやれる者の話を遮るな。

第34訓

生きているあいだは、顔を明るくしておけ。倉に入ったものは、そこから出て行かねばならない。パンは分かち合うためのものだ。もてなしを出し惜しむ者は、自分の腹を空にする。争いを起こす者は、自分が悲しみに行き着く。そのような者を仲間にするな。人が世を去った後の歳月に思い出されるのは、その親切な行いである。

主人が客に丸いパンを割って手渡し、傍らに無花果の鉢と水瓶が置かれている
人が世を去った後の歳月に思い出されるのは、その親切な行いである

第35訓

お前の商人たちをよく知っておけ。お前の身辺が思わしくないとき、友人たちの間での良い評判は、水の満ちた水路となるからだ。それは人の地位よりも大切なものであり、ひとりの富は他の者へと移っていく。息子の良い評判は父の誉れであり、良い人柄は後々まで記憶される。

第36訓

まず正せ。それに沿って教えよ。悪徳は引き抜かれねばならない。美徳が残るためである。これは災いの種ではない。口答えする者は、争いを起こす者となるのだから。

第37訓

お前が女に恥じ入らせるところがあったなら――心のみだらな、町の人々に偽りの身の上と知られた女であっても――しばらくは彼女に優しくせよ。追い払わず、食べる物を与えよ。そのみだらな心も、お前の導きを重んじるようになるだろう。

第38訓

従順な息子の聞き従う姿は見事なものだ。彼は入って来て、素直に耳を傾ける。

聞くことに優れ、語ることに優れているのは、気高いことに聞き従うすべての人である。聞き従う者の従順は、気高いものだ。

従順は、あるすべてのものにまさる。それは好意を生む。

父がそれによって老年に達したもの、すなわち従順を、息子が父から受け取るのは、なんと良いことか。

神が望むのは従順であり、不従順は神に忌み嫌われる。

まことに、その主を従わせもし背かせもするのは心である。人の健やかで無事な生涯は、その心にかかっている。

言われたことに聞き従うのは従順な人である。聞き従うことを愛する者こそが、命じられたことをやり遂げる。

聞き従う者は、やがて人に従われる者となる。

息子が父に聞き従うのはまことに良いことであり、語った父はそれを大いに喜ぶ。そのような息子は、主人となっても穏やかであり、彼の言葉を聞く者は、その語った彼に従うだろう。彼は姿も美しく、父に重んじられる。彼の記憶は、地上に生きる者たちの口に、彼らが存在する限りとどまるだろう。

第39訓

息子には父の言葉を受け取らせよ。その定めのどれひとつもおろそかにさせるな。お前の息子を〔このように〕教えよ。従順な人は、君侯たちの目に非の打ちどころのない者と映るのだから。命じられたことに従って口を導き、注意深く従順であるなら、お前の息子は賢くなり、その歩みはふさわしいものとなる。不注意は明日の不従順につながるが、分別は彼を堅く立たせる。愚か者はといえば、打ち砕かれるだろう。

低い椅子に座る老いた父に、片膝をついた息子が両手のひらを上に向けて向き合っている
息子には父の言葉を受け取らせよ

第40訓

従順を欠いた愚か者は、何ひとつなし遂げない。知識を無知と見なし、有益なものを有害なものと見なす。あらゆる過ちを犯し、そのために毎日叱責される。彼はそれとともに死の中に生きる。それが彼の糧である。くだらないおしゃべりを、君侯たちの知恵ででもあるかのように感嘆して聞き、毎日を死の中に生きる。彼はその災難のゆえに人に避けられる。毎日その身に降りかかる苦難の多さのゆえに。

第41訓

聞き従う息子は、ホルスの徒のようである。聞き従ったのち、彼は良き者となる。年を重ね、名誉と尊敬に達する。彼は同じように自分の息子や娘たちに語り伝え、こうして父の教えを新たにする。人は皆、自分を生んだ者がしたように教え、それを子どもたちへと伝えていく。彼らにもまた〔順に〕その息子や娘たちに語らせよ。その行いによって名を知られるように。お前の語ることが、子どもたちの生涯に真実と正義を植えつけるようにせよ。そうすれば最高の権威が訪れ、罪は〔彼らから〕離れて行く。これを見た人々は「確かにあの人は良い目的のために語ったのだ」と言い、同じようにするだろう。あるいは「まことにあの人は熟達した人だった」と。そしてすべての人々が言うだろう。「民を導くのはこの人たちだ。彼らなくして威厳は完全にならない」と。

一語も取り去るな。一語も加えるな。一語を別の語の場所に置くな。自分の内に……を開かないよう気をつけよ。

学識ある人がお前に耳を傾けているときは、言葉に注意せよ。お前の語るのを聞く人々の口に、良きものとして永く据えられることを願え。熟達者として席に入ったなら、正確な唇で語れ。お前の振る舞いがふさわしいものであるように。

第42訓

心は溢れるままにしておけ。しかし口は控えよ。貴人たちの中では振る舞いを正確に、主君の前ではふさわしくして、命じられたことを行え。そのような息子は、自分に耳を傾ける者たちに語る者となり、さらには、彼を生んだ父も引き立てられるだろう。語るときには心を傾け、聞いている貴人たちが「彼の口から出てくるものはなんと見事か」と言うようなことを語れ。

第43訓

主君がお前に命じたことを果たせ。父の教えはなんと良いものか。息子は父から出た者であり、父は息子がまだ生まれぬうちから、その子のことを語っていたのだから。そして息子のためになされたことは、息子に命じられることよりも多い。まことに、良い息子は神の賜物である。命じられた以上のことを行い、正しいことを行い、そのすべての歩みに心を込める。

0303

聞き従う者への約束

私がお前に語ったこれらのことに聞き従うなら、お前の立ち居振る舞いはすべて最良のものとなるだろう。まことに、真実という徳が、その美点の中にあるからだ。これらの言葉の記憶を人々の口に据えよ。その格言は良いものだからである。ここに書き記された言葉は、ひとつとしてこの地から永遠に絶えることなく、君侯たちが立派に語るための手本とされるだろう。この言葉は人を教える。聞いたのちに、どう語るべきかを。そうだ、聞いたのちの彼は、従うことに巧みな者、語ることに優れた者となるだろう。幸運が彼に訪れる。彼は最高の位に就く者となるからだ。彼は生涯の終わりまで恵まれ、常に満ち足りているだろう。その知識は、彼を安全な場所へと導く案内となり、そこで彼は地上にある間、栄えるだろう。学ぶ者はその知識に満ち足りる。君侯はまた君侯で、その心は幸福となり、舌はまっすぐにされる。そして〔これらの格言によって〕彼の唇は語り、目は見、耳は聞くだろう。その息子のためになることを。息子が偽りなく、正しく振る舞うように。

さて、お前が私の地位に達するなら、お前の身体は栄え、王はお前のなすことすべてに満足し、お前は私が地上で過ごしたのに劣らぬ年月を重ねるだろう。私は百十年の生涯を重ねた。王が先祖たちにまさる恩寵を私に授けてくださったからである。それは、私が老年に至るまで、王のために真実と正義を行ったからだ。

書記が無地のパピルスに向かい、背後で父が息子に語りかけている
これらの言葉の記憶を人々の口に据えよ

これにて終わる。初めから終わりまで、書に見出されたとおりに。

1 / 10%