0114
第1節 メをすべる女主人
第1行
あらゆるメの女主人、まばゆく昇る光よ。
第2行
輝きをまとう正しき女、アンとウラシュに愛される方よ。
第3行
天の聖なる女、大いなる宝冠をいただく方よ。
第4行
正しい冠を愛し、エン神官の位にふさわしい方よ。
第5行
その七つのメを、すべて手に握った方よ。
第6行
わたしの女主人よ、大いなるメを統べ守るのはあなた。
第7行
あなたはメを取り上げ、メをその手に掛けた。
第8行
あなたはメをかき集め、メを胸に抱いた。
第9行
竜のように、あなたは異国に毒を浴びせた。
第10行
嵐の神イシュクルのように大地へ轟くとき、穀物はあなたの前に立っていられない。
第11行
異国の山々へ押し下る大洪水として、
第12行
天と地の先頭に立つ方、あなたはその地のイナンナ。
0214
第2節 アンの命を果たす方
第13行
燃えさかる火を国土に降らせる方、
第14行
アンからメを授かり、獣にまたがる女主人よ、
第15行
アンの聖なる命のままに言葉を発する方よ。
第16行
大いなる祭儀はあなたのもの。誰がそれを見きわめられよう。
第17行
異国を打ち砕く方よ、あなたは嵐に力を与える。
第18行
エンリルに愛される方よ、あなたは国土に畏れを敷いた。
第19行
あなたはアンの命令を果たすために立つ。
0314
第3節 嵐となって進む方
第20行
わたしの女主人よ、あなたの雄叫びに異国はひれ伏す。
第21行
畏るべき輝きと嵐を前に、人という人が
第22行
声を失い、おののいてあなたの前に進み出るとき、
第23行
あなたはあらゆるメの中で、最も恐ろしいメを手に取る。
第24行
あなたのゆえに、涙の敷居は開け放たれ、
第25行
人びとは大いなる嘆きの家への道を歩まされる。
第26行
戦の先陣で、すべてはあなたの前に薙ぎ倒される。
第27行
わたしの女主人よ、あなたの力は、歯で火打石をも噛み砕く。
第28行
突き進む嵐のように、あなたは突き進む。
第29行
吼える嵐とともに、あなたは吼える。
第30行
イシュクルとともに、あなたは轟きつづける。
第31行
荒ぶる風という風とともに、あなたは人びとを吹き疲れさせる。
第32行
それでいて、あなたの足は疲れを知らない。
第33行
嘆きのバラグ太鼓に合わせて、哀歌がうたい出される。
0414
第4節 神々もおそれる怒り
第34行
わたしの女主人よ、大いなる神々アヌンナは、
第35行
羽ばたくこうもりのように、あなたを逃れて廃墟の丘へ飛び去る。
第36行
彼らはあなたの恐ろしいまなざしの前に立てない。
第37行
あなたの恐ろしい面ざしへ、頭を向けることもできない。
第38行
怒りに燃えるあなたの心を、誰が冷ませよう。
第39行
災いをはらんだあなたの怒りは、冷ますにはあまりに大きい。
第40行
女主人よ、その思いは和らぐのか。女主人よ、その心は喜ぶのか。
第41行
スエンの大いなる娘よ、あなたの怒りは冷めることがない。
0514
第5節 背いた地への裁き
第42行
異国にまさる女主人よ、あなたの領分から誰が何を奪えよう。
第43行
あなたが山々へ領分を広げれば、そこの穀物は災いに変わる。
第44行
その大門は火で焼き払われる。
第45行
あなたのゆえに川には血が流れ込み、民はそれを飲むほかない。
第46行
彼らは軍勢を、こぞってあなたの前へ引き渡し、
第47行
精鋭の隊を、こぞってあなたのために解き散らし、
第48行
屈強の若者たちを、こぞってあなたの務めに立たせる。
第49行
その町々の踊りの広場は、嵐で埋め尽くされた。
第50行
彼らは盛りの若者たちを、捕らわれ人としてあなたの前へ追い立てる。
第51行
「この異国はあなたのもの」と言わなかった町、
第52行
「あなたの父君のもの」と言わなかった町に、
第53行
あなたの聖なる言葉が下り、その町はあなたの足もとへ引き戻される。
第54行
その家畜の囲いから、行き届いた世話は消え失せる。
第55行
その町の女は、夫と睦まじく語らなくなる。
第56行
夜更けに夫と語り合うこともなく、
第57行
心のうちの清い思いを、夫に明かすこともない。
第58行
猛り立つ聖なる野牛、スエンの大いなる娘よ、
第59行
アンにまさる女主人よ、あなたの領分から誰が何を奪えよう。
0614
第6節 讃歌のはじまり
第60行
正しいメを帯びた、女王たちの大いなる女王、
第61行
聖なる胎から生まれ、生みの母をもしのぐ方、
第62行
賢く、見通す力を持つ、すべての異国の女主人、
第63行
満ちあふれる民に命を与える方よ。わたしはあなたの聖なる歌をうたおう。
第64行
メにふさわしい真の神よ、あなたの堂々たる言葉は偉大である。
第65行
心の深い、輝く心の正しき女よ、あなたのメをあなたのために数え上げよう。
0714
第7節 ギパルからの追放
第66行
あなたに仕えるため、わたしは聖なるギパルに入った。
第67行
わたしはエン神官、わたしはエンヘドゥアンナ。
第68行
儀式の籠を捧げ持ち、喜びの歌をうたっていた。
第69行
それがいまは、死者への供物を置かれる身。わたしはもう、そこに生きていないかのように。
第70行
昼の光に近づけば、光はわたしを焼き、
第71行
木陰に近づけば、嵐がわたしを覆った。
第72行
蜜のようだったわたしの口は、泡と化し、
第73行
人の心を和らげたわたしの力は、塵に帰った。
0814
第8節 スエンへの取りなしの願い
第74行
スエンよ、ルガルアンネのこと、わたしの運命のことを、
第75行
アンに告げてください。アンがわたしのために解いてくださるように。
第76行
あなたがアンに告げたそのときに、アンはわたしを解き放つでしょう。
第77行
女神はルガルアンネから運命を奪い取る。
第78行
異国も洪水も、その足もとに伏している。
第79行
女神はまことに偉大。町々を打ち震わせる。
第80行
進み出てください。女神の心が、わたしのために静まるように。
0914
第9節 祈りと告発
第81行
わたしエンヘドゥアンナは、あなたに祈りを捧げる。
第82行
わたしの涙を、甘い麦酒のように、
第83行
聖なるイナンナよ、あなたへ注ぎ出し、「裁きを」と申し上げよう。
第84行
アシュイムバッバルのことで、思いわずらわないでください。
第85行
あの者は聖なるアンの清めの儀式を、ことごとく変え、
第86行
アンからエアンナ神殿を奪い取った。
第87行
もっとも大いなる神を、あの者は畏れなかった。
第88行
魅力の尽きない、美しさの果てないその神殿を、
第89行
あの者は滅びの家へと変えてしまった。
第90行
同輩のような顔でわたしの前に入りこみ、その実、妬みゆえに近づいたのだ。
1014
第10節 終わらない裁き
第91行
わたしの聖なる野牛よ、あの者を追い立て、あの者を捕らえてください。
第92行
命の息づくその場所で、いまのわたしは何者なのか。
第93行
あなたのナンナを憎む背きの地を、アンが引き渡してくださるように。
第94行
その町を、アンが打ち裂いてくださるように。
第95行
その町を、エンリルが呪ってくださるように。
第96行
泣きじゃくるその子を、母がなだめずにいるように。
第97行
女主人よ、嘆きが始められたその地で、
第98行
あなたの嘆きの船が、敵の地に打ち捨てられるように。
第99行
わたしは聖なる歌のゆえに、死なねばならないのか。
第100行
わたしのナンナは、わたしを顧みてくださらなかった。
第101行
裏切りの地で、わたしは打ち砕かれるばかり。
第102行
アシュイムバッバルは、わたしに裁きを下さなかった。
第103行
下したとして、何になろう。下さなかったとして、何になろう。
第104行
あの者は勝ち誇って立ち、わたしを神殿から追い出した。
第105行
つばめのように、わたしは窓から飛ばされ、命の力は尽きた。
第106行
あの者はわたしに、山のいばらの中を歩ませた。
第107行
エン神官の正しい冠は、わたしから剥ぎ取られた。
第108行
短剣と匕首を寄こして、「おまえにはこれがふさわしい」と言った。
1114
第11節 天地の大いなる女主人へ
第109行
この上なく尊い女主人、アンに愛される方よ、
第110行
あなたの聖なる心は偉大。どうかわたしのために、和らぎを取り戻してください。
第111行
ウシュムガルアンナに愛される妻よ、
第112行
あなたは天の果てから頂までの、大いなる女主人。
第113行
アヌンナの神々は、あなたに服した。
第114行
生まれたときには、末の女王にすぎなかったあなたが、
第115行
いまや大いなる神々アヌンナを、どれほど超えたことか。
第116行
アヌンナの神々は唇を地につけ、あなたを拝む。
第117行
だがわたしの裁きは終わらない。敵意ある判決が、わたしの判決のようにわたしを取り巻く。
第118行
花咲く寝床に、わたしは手を伸ばさなかった。
第119行
ニンガルの告げた言葉を、誰にも明かさなかった。
第120行
わたしはナンナの、清められたエン神官。
第121行
アンに愛されるわたしの女主人よ、あなたの心がわたしへ静まりますように。
1214
第12節 知られよ、あなたの偉大を
第122行
知られよ、知られよ。ナンナはまだ言い渡していない。「彼はあなたのもの」と言っただけなのだ。
第123行
あなたが天のように高いことは、知られよ。
第124行
あなたが大地のように広いことは、知られよ。
第125行
あなたが背きの地を打ち砕くことは、知られよ。
第126行
あなたが異国に吼えることは、知られよ。
第127行
あなたが頭を打ち砕くことは、知られよ。
第128行
あなたが犬のように屍を喰らうことは、知られよ。
第129行
あなたのまなざしが恐ろしいことは、知られよ。
第130行
その恐ろしいまなざしを上げることは、知られよ。
第131行
あなたの目がきらめくことは、知られよ。
第132行
あなたが揺るがず、従わぬことは、知られよ。
第133行
あなたがつねに勝利して立つことは、知られよ。
第134行
ナンナが言い渡さず、「彼はあなたのもの」と言ったこと、
第135行
それがあなたを大きくした。わたしの女主人よ、あなたは最も偉大になった。
第136行
アンに愛されるわたしの女主人よ、あなたの怒りのすべてを、わたしは語ろう。
第137行
炭火を香炉に盛り、清めの儀式を整えた。
第138行
聖なるエシュダムの宮はあなたを待つ。それでもあなたの心は、わたしへ静まらないのか。
1314
第13節 夜に満ちた歌
第139行
満ちて、あふれてやまないゆえに、大いなる気高い女主人よ、わたしはあなたにこの歌をうたった。
第140行
夜更けにあなたへうたわれたことを、
第141行
真昼には歌い手が、あなたのためにくり返しますように。
第142行
捕らわれたあなたの夫のため、捕らわれたあなたの子のために、
第143行
あなたの怒りはいや増し、あなたの心は静まらない、と。
1414
第14節 受け入れられた讃歌
第144行
力ある女主人、君主の集いに敬われる方は、
第145行
エンヘドゥアンナからの供物を受け入れた。
第146行
イナンナの聖なる心は、和らぎを取り戻した。
第147行
光は彼女に快く、喜びは彼女に広がり、彼女はあでやかな美しさに満ちた。
第148行
昇る月の光のように、彼女は喜びをたたえた。
第149行
ナンナは進み出て、驚きの目で彼女を見つめ、
第150行
母なるニンガルは、彼女を祝福した。
第151行
門の柱までもが、彼女に挨拶を送る。
第152行
聖なる女へ向けられたその言葉は、気高い。
第153行
異国を打ち砕く方、アンとともにメを分かち持つ方、
第154行
美しさをまとうわたしの女主人、イナンナよ、讃えあれ。
