紀元前1200年〜紀元前1100年頃
エヌマ・エリシュ
諸説あり・作者不詳(作)
メソポタミア / バビロン / 叙事詩 / 神話
作品概要
どんな古典か
約3100年前のバビロンで生まれた創世叙事詩。冒頭の二語「エヌマ・エリシュ(上なる天がいまだ名づけられざりしとき)」がそのまま題名となった。原初の海である女神ティアマトと淡水の神アプスーの混沌から神々が生まれ、やがて母ティアマトは怪物の軍団を率いて子らに牙をむく。名乗り出た若き神マルドゥクは、勝利の代償に神々の王権を要求し、嵐を駆ってティアマトを討つ。引き裂かれたその体から天と地が造られ、反逆の神キングウの血から人間が造られ、大地の中心にバビロンとその神殿エサギラが据えられる。全7書板・約1000行。バビロン新年祭で毎年朗誦され、王権と世界秩序の根拠を語り続けた「国家の叙事詩」である。粘土板は前7世紀ニネヴェのアッシュルバニパル王図書館跡などから出土し、1876年のジョージ・スミスによる紹介は、聖書の天地創造に先立つ創世神話として世界に衝撃を与えた。
この作品のテーマ
創世 ・ 混沌と秩序 ・ 神々の戦い ・ 王権 ・ 人間の創造 ・ 運命 ・ 新年祭
版と来歴
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原文から現代日本語版まで、4つの版の来歴を公開しています。
ニネヴェ出土粘土板ほか原文(アッカド語)
紀元前650年・ニネヴェ
原文底本参照底本・権利・作成方法
権利
パブリックドメイン — 全7書板構成のアッカド語原文。主要写本は前7世紀ニネヴェのアッシュルバニパル王図書館跡から出土した粘土板群(クユンジク・コレクション、大英博物館所蔵)で、1848〜76年の発掘により回収され、1875年にジョージ・スミスが最初の断片を同定した。ほかに新バビロニア時代のバビロン系写本(No. 45,528ほか)が第1書板などを補う。1902年当時は第5書板を中心に欠損が多く、本サイトの底本キング版はその時点の校訂を反映する 底本を確認
スミス英訳(1876)
1876年 / 訳:ジョージ・スミス
翻訳底本参照底本・権利・作成方法
派生元
ニネヴェ出土粘土板ほか原文(アッカド語)を翻訳して作成
権利
パブリックドメイン — 『The Chaldean Account of Genesis』(New York: Scribner, Armstrong and Co., 1876)第5章所収。エヌマ・エリシュの断片を世界で最初に同定・翻訳した部分訳で、書板の帰属や読みには後年訂正された箇所が多い。著者スミス1876年没により日本(没後70年)でパブリックドメイン、1930年より前の出版により米国でもパブリックドメイン。Wikisourceに校正済み全文、Internet Archiveにスキャン公開 底本を確認
キング英訳(1902)
1902年 / 訳:レナード・ウィリアム・キング
翻訳底本参照底本・権利・作成方法
派生元
ニネヴェ出土粘土板ほか原文(アッカド語)を翻訳して作成
権利
パブリックドメイン — 『The Seven Tablets of Creation』Vol. I(London: Luzac and Co., 1902)。翻字と対訳・注を備えた校訂訳で、キング自身が接合した新断片により第6書板の人間創造の場面などを初めて復元した。訳者キング1919年没により日本(没後70年)でパブリックドメイン、1930年より前の出版により米国でもパブリックドメイン。Internet Archiveでスキャン全文公開 底本を確認
AGIラボ現代日本語訳
2026年 / 訳:Fable 5 / 編集:AGIラボ編集部
翻訳編集済み無料公開内容をプレビュー
約3100年前のバビロンで、新年祭のたびに朗誦された創世叙事詩。冒頭と決戦の場面をプレビューとして公開しています。
天地未生 — 上なる天は、いまだその名を呼ばれず、下なる大地も、いまだ名を負っていなかったとき――神々を生んだ始源のアプスーと、そのすべてを産んだ母、混沌なるティアマトは、その水をひとつに混じり合わせていた。野はまだ形をなさず、沼地も見えなかった。
決戦 — 主は網を広げて彼女を捕らえ、背後に控えさせた邪悪な風を、その顔に向けて解き放った。ティアマトが口を限りに開いたとき、彼はそこへ邪悪な風を吹き込み、唇を閉じることを許さなかった。すさまじい風はその腹を満たし、彼女の勇気は奪われ、口は大きく開いたままになった。
原初の水の混沌、十一種の怪物の軍団、マルドゥクの即位、ティアマトの体からの天地創造、人間の創造、五十の名の讃歌――全7書板・30場面(欠損含む)の現代日本語訳は、AGIラボ会員向けに公開されます。
底本・権利・作成方法
派生元
キング英訳(1902)を翻訳して作成、スミス英訳(1876)を照合して作成
権利
AGIラボ — AGIラボ制作。キング英訳(1902)を主底本とし、スミス英訳(1876)の対応断片と照合して作成。底本はいずれもパブリックドメイン
作成方法
Fable 5による訳をキング英訳と、スミス英訳の対応断片とで場面単位に照合し、解釈が分かれる箇所は注釈のdiscrepancyに記録して原則キングに従った。1902年当時の粘土板の欠損は補わず、欠損のunitまたは本文中の〔欠損〕として明示し、復元に関わる情報は注釈のlacuna-restorationに記録。底本が疑問符を付す単語レベルの不確かな読みと、底本の翻字・括弧類は本文から省いた。固有名詞は今日の慣用表記(ティアマト、マルドゥク、エア等)を採用。AGIラボ編集部が編集した。現代の著作権のある翻訳(Heidel 1942、Speiser 1950、Lambert 2013等)は参照していない。
構成
全体の目次
この作品は30の単位で構成されています。
全30項目を見る
- 天地未生
- 神々の誕生
- アプスーの謀議
- 神々の恐れとエアの察知
- 欠損(68〜82行) †
- ティアマトへの唆し
- 怪物の軍団とキングウ
- エアの報告
- アンシャルの嘆きとアヌの敗走
- 欠損(86〜103行) †
- マルドゥクの条件
- アンシャルの言伝
- ガガの口上
- 神々の宴
- 王権の授与
- 武具の支度
- 対峙
- 決戦
- 天の創造
- 星々と暦の創造
- 欠損(27〜65行) †
- 弓の星(断片)
- 欠損(88〜140行) †
- 人間の創造
- 欠損(22〜137行) †
- 神々の讃美
- 称名の讃歌
- 欠損(47〜104行) †
- ニビルと五十の名
- エピローグ
† 底本に欠損があり、他写本から復元された箇所
