0112
第1章
1:1
エルサレムの王、ダビデの子コヘレトの言葉。
1:2
なんとむなしいことか、とコヘレトは言う。なんとむなしいことか。すべてはむなしい。
1:3
日の下で人がどれほど労苦しても、いったい何が残るのか。
1:4
一つの世代が去り、次の世代が来る。それでも大地はいつまでも変わらない。
1:5
太陽は昇り、太陽は沈む。そして昇った場所へ、息を切らすように戻っていく。
1:6
風は南へ吹き、北へ向きを変える。巡り、また巡り、同じ道を戻ってくる。
1:7
川はみな海へ流れ込むのに、海が満ちることはない。川は流れ出た場所へ戻り、またそこから流れていく。
1:8
すべては疲れ果てている。言葉では言い尽くせない。目は見ても満たされず、耳は聞いても満たされない。
1:9
かつてあったことが、これからもあり、かつて行われたことが、これからも行われる。日の下にまったく新しいものはない。
1:10
「見よ、これは新しい」と言われるものも、すでに遠い昔からあった。
1:11
昔の人々は忘れられ、これから生まれる人々も、さらに後の人々には忘れられる。
1:12
私コヘレトは、エルサレムでイスラエルの王を務めた。
1:13
私は心を尽くし、天の下で行われるすべてを、知恵によって探り、調べた。これは神が人に負わせた、つらい務めである。
1:14
日の下で行われるすべての業を私は見た。だが、すべてはむなしく、風を追うようなものだった。
1:15
曲がったものはまっすぐにできず、欠けているものは数えることができない。
1:16
私は自分の心に語りかけた。「私は、これまでエルサレムを治めた誰よりも深い知恵を得た。私の心は、知恵と知識を豊かに経験してきた。」
1:17
私は心を尽くして知恵を知ろうとし、狂気と愚かさをも知ろうとした。だが、これもまた風を追うようなものだと悟った。
1:18
知恵が増すほど悩みも増え、知識を増すほど痛みも増えるからだ。
0212
第2章
2:1
私は心の中で言った。「さあ、楽しさを試し、快楽を味わってみよう。」だが、これもまたむなしかった。
2:2
笑いについては「ばかげている」と言い、楽しみについては「何の役に立つのか」と言った。
2:3
私は、知恵を手放さないまま酒で体を満たし、愚かさにも身を任せてみた。人が天の下で過ごす短い一生に、何をするのがよいのかを見極めようとしたのだ。
2:4
私は大きな事業を始め、自分のために家々を建て、ぶどう畑を植えた。
2:5
庭園や果樹園を造り、あらゆる実のなる木を植えた。
2:6
水をためる池を造り、そこから若木の茂る森を潤した。
2:7
男女の奴隷を買い、家で生まれた奴隷もいた。牛や羊の群れも、私より前にエルサレムにいた誰より多く持った。
2:8
銀と金、王や国々の宝を集めた。男女の歌い手を置き、多くの女性をはじめ、人の子らが喜ぶものを手に入れた。
2:9
こうして私は、私より前にエルサレムにいた誰よりも大きな者となった。それでも知恵は私のもとにあった。
2:10
目が望んだものは何一つ拒まず、どんな喜びも心に禁じなかった。私の心はすべての労苦を喜び、それが労苦から得た私の取り分だった。
2:11
しかし、自分の手で成し遂げたすべての業と、そこに注いだ労苦を振り返ると、すべてはむなしく、風を追うようなものだった。日の下には何も残らなかった。
2:12
私は知恵と狂気と愚かさを見比べようとした。王の後に来る者に、すでに行われたこと以上の何ができるだろう。
2:13
私は、光が闇に勝るように、知恵が愚かさに勝ることを知った。
2:14
知恵ある者は目を開いて歩くが、愚かな者は闇の中を歩く。それでも私は、どちらにも同じ結末が訪れると知った。
2:15
私は心の中で言った。「愚かな者と同じ結末が私にも訪れる。それなら、私がこれほど知恵を得たのは何のためか。」そして、これもまたむなしいと思った。
2:16
知恵ある者も愚かな者も、いつまでも覚えられることはない。これから来る日々には、どちらも忘れ去られる。知恵ある者も、愚かな者と同じように死ぬ。
2:17
私は生きることを嫌になった。日の下で行われる業がつらく思えたからだ。すべてはむなしく、風を追うようなものだった。
2:18
私は、日の下で重ねたすべての労苦を嫌になった。それを後に来る者へ残さなければならないからだ。
2:19
その者が知恵ある者か愚かな者か、誰に分かるだろう。それでも、その者は、私が知恵を尽くし、日の下で築いたすべてを支配する。これもまたむなしい。
2:20
そこで私は、日の下で重ねたすべての労苦を思い、心を絶望へ向けた。
2:21
知恵と知識と腕を尽くして働いた人が、そのために何も働かなかった人へ、自分の取り分を譲らなければならないことがある。これもまたむなしく、大きな災いである。
2:22
日の下で重ねるすべての労苦と心の苦しみによって、人はいったい何を得るのか。
2:23
その日々はことごとく痛み、その仕事は悩みである。夜になっても心は休まらない。これもまたむなしい。
2:24
人にとって、自分の労苦のうちに食べ、飲み、よいものを味わう以上のことはない。私は、これも神の手から来ると知った。
2:25
神によらずに、誰が食べ、誰が楽しめるだろう。
2:26
神は、御前に良しとされる人には知恵と知識と喜びを与える。一方、罪を犯す人には集めて蓄える仕事を与え、それを神の御前に良しとされる人へ渡させる。これもまたむなしく、風を追うようなものだ。
0312
第3章
3:1
すべてのことには季節があり、天の下のあらゆる営みには時がある。
3:2
生まれる時があり、死ぬ時がある。植える時があり、植えたものを抜く時がある。
3:3
殺す時があり、癒やす時がある。壊す時があり、建てる時がある。
3:4
泣く時があり、笑う時がある。嘆く時があり、踊る時がある。
3:5
石を投げ捨てる時があり、石を集める時がある。抱き合う時があり、抱き合うことを控える時がある。
3:6
捜す時があり、失う時がある。保つ時があり、投げ捨てる時がある。
3:7
裂く時があり、縫う時がある。黙る時があり、語る時がある。
3:8
愛する時があり、憎む時がある。戦う時があり、平和の時がある。
3:9
働く人は、その労苦から何を得るのか。
3:10
私は、神が人の子らに負わせた務めを見た。
3:11
神はすべてを、その時にかなって美しく造った。また、人の心に永遠への思いを置いた。それでも人は、神が初めから終わりまで行う業を見極めることができない。
3:12
私は知った。人にとって、生きている間に喜び、よいことをする以上のことはない。
3:13
人が食べ、飲み、すべての労苦のうちによいものを味わえるなら、それは神の贈り物である。
3:14
私は知った。神が行うことはすべて永遠に続く。何も加えることができず、何も取り去ることができない。神がそうしたのは、人が神を畏れるためである。
3:15
今あるものは、すでにあった。これからあるものも、すでにあった。神は過ぎ去ったものを再び求める。
3:16
私はさらに、日の下で、裁きの場に悪があり、正義の場にも悪があるのを見た。
3:17
私は心の中で言った。「神は正しい者も悪い者も裁く。あらゆる営みとあらゆる業には、そのための時がある。」
3:18
私は人の子らについて心の中で言った。「神は彼らを試し、自分たちも獣にすぎないことを悟らせる。」
3:19
人に訪れることは獣にも訪れる。両者に同じ結末がある。一方が死ぬように、もう一方も死ぬ。どちらにも同じ息がある。人が獣に勝るところはない。すべてはむなしい。
3:20
すべては同じ場所へ行く。すべては土から生まれ、すべては土へ帰る。
3:21
人の息が上へ昇り、獣の息が地の下へ降ると、誰が知っているだろう。
3:22
私は、人が自分の業を喜ぶ以上のことはないと知った。それがその人の取り分だからだ。死んだ後に起こることを、誰がその人に見せられるだろう。
0412
第4章
4:1
私は再び、日の下で行われるあらゆる虐げを見た。見よ、虐げられる人々の涙を。彼らには慰める人がいない。虐げる者の手には力があるのに、彼らには慰める人がいない。
4:2
私は、今なお生きている人よりも、すでに死んだ人を幸いだと思った。
4:3
だが、両者より幸いなのは、まだ生まれていない人だ。日の下で行われる悪い業を見ていないからだ。
4:4
私は、あらゆる労苦と巧みな仕事が、人と隣人との競い合いから生まれるのを見た。これもまたむなしく、風を追うようなものだ。
4:5
愚かな者は腕を組み、自分の身を食いつぶす。
4:6
両手いっぱいに労苦と風を追うことを抱えるより、片手に静けさを持つほうがよい。
4:7
私は再び、日の下のむなしさを見た。
4:8
ひとりきりで、連れ合いもいない人がいる。子も兄弟もいないのに、その労苦には終わりがなく、富を見ても満足しない。「私は誰のために働き、自分から楽しみを奪っているのか」とも問わない。これもまたむなしく、つらい務めである。
4:9
ひとりよりふたりがよい。ともに働けば、よい報いを得られるからだ。
4:10
ひとりが倒れても、もうひとりが仲間を起こせる。だが、ひとりきりで倒れ、起こしてくれる人がいない者は不幸だ。
4:11
ふたりで横になれば温まる。だが、ひとりでどうして温まれるだろう。
4:12
ひとりなら打ち負かされても、ふたりなら立ち向かえる。三つよりの縄は、すぐには切れない。
4:13
貧しくても知恵のある若者は、もはや忠告を受け入れない年老いた愚かな王に勝る。
4:14
その若者は牢獄から出て王となった。王国の中で、貧しく生まれた者だった。
4:15
私は、日の下を歩むすべての生きている人が、王に代わって立つ若者の側につくのを見た。
4:16
彼が率いた民は数え切れないほどだった。それでも、後の世代は彼を喜ばない。確かにこれもまたむなしく、風を追うようなものだ。
4:17
神の家へ行くときは、足もとに気をつけよ。近づいて聞くことは、愚かな者がいけにえをささげることに勝る。彼らは、自分が悪を行っていることさえ知らない。
0512
第5章
5:1
神の前で口を急がせず、心をせかして言葉を出してはならない。神は天におられ、あなたは地にいる。だから言葉は少なくせよ。
5:2
忙しさが重なると夢が生まれ、言葉が重なると愚かな声が生まれる。
5:3
神に誓願を立てたなら、果たすのを遅らせてはならない。神は愚かな者を喜ばれない。誓ったことを果たせ。
5:4
誓って果たさないより、初めから誓わないほうがよい。
5:5
口の言葉によって自分の身を罪へ導いてはならない。使者の前で「あれは間違いでした」と言ってはならない。なぜあなたの言葉によって神を怒らせ、自分の手の業を滅ぼされるのか。
5:6
夢が増せば、むなしさも言葉も増す。ただ神を畏れよ。
5:7
ある州で貧しい人が虐げられ、裁きと正義が奪われているのを見ても、驚いてはならない。高い地位の者を、さらに高い者が見張り、その上にも高い者たちがいる。
5:8
大地の実りはすべての人のためにある。王でさえ畑に仕えられている。
5:9
銀を愛する人は銀で満足せず、富を愛する人は収益で満足しない。これもまたむなしい。
5:10
財産が増えると、それを食べる人も増える。持ち主に何が残るだろう。ただ目で眺めるだけではないか。
5:11
働く人の眠りは、食べる量が少なくても多くても心地よい。だが、富む人は満腹のために眠れない。
5:12
私は日の下で、痛ましい災いを見た。持ち主が、自分を害するまで富を守り続けることだ。
5:13
その富は不運な事業で失われる。息子が生まれても、その手には何もない。
5:14
人は母の胎から裸で出て来たように、裸で帰っていく。どれほど労苦しても、手に持って行けるものは何もない。
5:15
これもまた痛ましい災いだ。人は来たときと同じように去る。風のために労苦して、何が残るのか。
5:16
その人は一生、闇の中で食べ、深い悩みと病と怒りを抱える。
5:17
見よ、私がよい、美しいと知ったのは、神から与えられた命の日々、日の下で重ねるすべての労苦のうちに食べ、飲み、よいものを味わうことだ。それがその人の取り分だからだ。
5:18
神から富と財産を与えられ、それを味わい、自分の取り分を受け取り、労苦を喜ぶ力も与えられた人がいる。これは神の贈り物である。
5:19
その人は自分の命の日々をくよくよ振り返らない。神が心の喜びをもって応えてくださるからだ。
0612
第6章
6:1
私は日の下で、人に重くのしかかる災いを見た。
6:2
神から富と財産と名誉を与えられ、望むものに何一つ欠けることのない人がいる。それなのに神は、それを味わう力をその人に与えず、見知らぬ人が味わう。これはむなしく、重い病のような災いだ。
6:3
たとえ百人の子をもうけ、長い年月を生きても、その人がよいもので満たされず、葬られさえしないなら、私は、死産の子のほうがその人より安らかだと言う。
6:4
その子はむなしさの中に来て、闇の中へ去り、その名も闇に覆われる。
6:5
太陽を見たことも、何かを知ったこともない。それでも、その子のほうがあの人より安らかである。
6:6
たとえ二千年生きても、よいものを味わわないなら何になるのか。すべての者は同じ場所へ行くのではないか。
6:7
人の労苦はすべて口のためにある。それでも欲望が満たされることはない。
6:8
知恵ある者は愚かな者より何が優れているのか。貧しくても、人々の前でどう歩むかを知る人には何があるのか。
6:9
目の前にあるものを味わうことは、欲望のままにさまようことに勝る。これもまたむなしく、風を追うようなものだ。
6:10
今あるものは、すでにその名を与えられている。人がどのような者かも知られている。人は、自分より強い方と争うことができない。
6:11
言葉が増えるほど、むなしさも増える。それで人に何が残るのか。
6:12
影のように過ぎる、むなしい命の日々、人にとって何がよいかを誰が知っているだろう。人が去った後、日の下で何が起こるかを、誰がその人に告げられるだろう。
0712
第7章
7:1
よい名は上質な香油に勝り、死ぬ日は生まれる日に勝る。
7:2
宴会の家へ行くより、喪に服す家へ行くほうがよい。死はすべての人の行き着くところであり、生きている人はそれを心に留めるからだ。
7:3
笑いより悲しみがよい。顔が悲しむとき、心はよいものに変えられるからだ。
7:4
知恵ある人の心は喪に服す家にあり、愚かな人の心は楽しみの家にある。
7:5
愚かな人の歌を聞くより、知恵ある人の叱責を聞くほうがよい。
7:6
愚かな人の笑いは、鍋の下でいばらがはじける音に似ている。これもまたむなしい。
7:7
虐げは知恵ある人を狂わせ、賄賂は心を壊す。
7:8
物事の終わりはその始まりに勝り、忍耐する心は高ぶる心に勝る。
7:9
心をせかして怒ってはならない。怒りは愚かな人の胸に住みつくからだ。
7:10
「昔のほうが今よりよかったのはなぜか」と言ってはならない。その問いは知恵から出たものではない。
7:11
知恵は相続財産とともにあればよい。日の光を見る人にとって利益となる。
7:12
知恵が守りとなるように、金も守りとなる。だが知恵という知識の優れたところは、それを持つ人を生かすことにある。
7:13
神の業を見よ。神が曲げたものを、誰がまっすぐにできるだろう。
7:14
順調な日には喜び、苦しい日にはよく見つめよ。神は一方を他方と並べて造られた。それは、自分の後に何が起こるかを人が見つけられないようにするためだ。
7:15
むなしい命の日々、私はあらゆることを見た。正しいのに滅びる人がいて、悪を行いながら長く生きる人がいる。
7:16
正しさに偏りすぎてはならず、自分を賢く見せすぎてはならない。なぜ自分を滅ぼすのか。
7:17
悪に傾きすぎてはならず、愚かな者になってはならない。なぜ自分の時が来る前に死ぬのか。
7:18
一方をつかみ、もう一方からも手を放さないのがよい。神を畏れる人は、その両方をわきまえて進む。
7:19
知恵は知恵ある人を、町にいる十人の権力者よりも強くする。
7:20
地上には、善を行い、決して罪を犯さない正しい人はいない。
7:21
人々が語るすべての言葉に心を向けてはならない。自分の奴隷があなたをののしるのを聞くかもしれないからだ。
7:22
あなた自身も何度となく人をののしったと、心の中では知っているはずだ。
7:23
私はこれらすべてを知恵によって試した。「私は知恵ある者になろう」と言ったが、知恵は私から遠かった。
7:24
存在するものは遠く、底知れず深い。誰がそれを見つけられるだろう。
7:25
私は心を向け、知り、探り、知恵と物事の道理を求めた。また、悪は愚かさであり、愚かさは狂気だと知ろうとした。
7:26
私は、死よりも苦い女を見いだした。その心は罠と網、その手は鎖のようだ。神の御前に良しとされる人は彼女から逃れるが、罪を犯す人は捕らえられる。
7:27
見よ、私が見いだしたことを、とコヘレトは言う。一つ一つを重ね、道理を探った結果である。
7:28
私の心はなおも探したが、見つけられなかった。千人の中から、ひとりの男は見つけた。だが、そのすべての中から、ひとりの女も見つけられなかった。
7:29
ただ、これだけは見いだした。神は人をまっすぐに造られたのに、人は多くの策略を求めた。
0812
第8章
8:1
誰が知恵ある人のようになれるだろう。誰が物事の意味を知っているだろう。人の知恵はその顔を明るくし、険しい表情を和らげる。
8:2
私は言う。王の命令を守れ。神の前で立てた誓いのゆえにも、そうせよ。
8:3
王の前を慌てて立ち去ってはならない。悪い事柄に加わり続けてはならない。王は望むことを何でも行うからだ。
8:4
王の言葉には力がある。誰が王に「何をしているのですか」と言えるだろう。
8:5
命令を守る人は災いに遭わない。知恵ある人の心は、ふさわしい時と裁きを知っている。
8:6
あらゆる事柄には、ふさわしい時と裁きがある。だが、人に降りかかる災いは重い。
8:7
これから何が起こるかを人は知らない。それがいつ起こるかを、誰が告げられるだろう。
8:8
息を支配し、引き留められる人はいない。死ぬ日を支配できる人もいない。戦いから免除される人もなく、悪によって悪を行う者が救われることもない。
8:9
私はこれらすべてを見て、日の下で行われるあらゆる業に心を向けた。人が人を支配し、害を与える時がある。
8:10
私は、悪い者が葬られるのを見た。彼らは聖なる場所へ出入りしていたが、そのように振る舞った町で忘れられた。これもまたむなしい。
8:11
悪い業への判決がすぐに執行されないため、人の子らの心は悪を行う思いで満たされる。
8:12
罪を犯す人が百回悪を行っても、なお長く生きることがある。それでも私は、神の御前で神を畏れる人には幸いがあると知っている。
8:13
悪い者には幸いがなく、その日々は影のようで、長くはならない。神の御前で畏れを持たないからだ。
8:14
地上には、むなしいことが起こる。正しい人が悪い者の業にふさわしい報いを受け、悪い者が正しい人の業にふさわしい報いを受ける。私は、これもまたむなしいと言った。
8:15
そこで私は喜びをたたえた。日の下で人にとって、食べ、飲み、喜ぶ以上によいものはないからだ。その喜びは、神から日の下で与えられた命の日々、労苦の中で人に寄り添う。
8:16
私は知恵を知ろうと心を尽くし、地上で行われる務めを見ようとした。人は昼も夜も、その目で眠りを見ることさえない。
8:17
そして私は、神のすべての業を見た。日の下で行われる業を、人は見つけ出すことができない。どれほど労苦して探しても見つからない。知恵ある人が「私は知っている」と言っても、見つけ出すことはできない。
0912
第9章
9:1
私はこれらすべてを心に置き、明らかにしようとした。正しい人も知恵ある人も、その業も、神の手の中にある。愛されるのか憎まれるのか、人には分からない。そのどちらも人の前にある。
9:2
すべての人に同じことが起こる。正しい人にも悪い人にも、善い人にも清い人にも汚れた人にも、いけにえをささげる人にもささげない人にも、同じ結末が訪れる。善い人も罪を犯す人も、誓う人も誓いを恐れる人も同じである。
9:3
日の下で行われるすべての中で、これが災いだ。すべての人に同じ結末が訪れる。そのため人の子らの心は悪で満ち、生きている間、その心には狂気がある。そして最後には死者のもとへ行く。
9:4
生きている者の仲間である限り、希望がある。生きている犬は、死んだ獅子に勝るからだ。
9:5
生きている人は、自分が死ぬことを知っている。だが死者は何も知らず、もはや報いを受けることもない。その記憶は忘れられる。
9:6
彼らの愛も憎しみもねたみも、すでに消え去った。日の下で行われるどんなことにも、もはや永遠に関わることはない。
9:7
さあ、喜んでパンを食べ、晴れやかな心でぶどう酒を飲め。神はすでに、あなたの業を喜んでおられる。
9:8
いつも白い服をまとい、頭には香油を絶やしてはならない。
9:9
日の下で与えられた、むなしい命のすべての日々、愛する伴侶とともに人生を味わえ。それが、日の下で重ねる労苦の中で、あなたに与えられた人生の取り分だからだ。
9:10
手にできることは何でも、力を尽くして行え。あなたが向かう死者の国には、仕事も計画も知識も知恵もないからだ。
9:11
私は再び、日の下で見た。競走は速い人のものとは限らず、戦いは強い人のものとは限らない。知恵ある人が食べ物を得るとも、賢い人が富を得るとも、知識ある人が好意を得るとも限らない。時と偶然が、すべての人に訪れる。
9:12
人は自分の時を知らない。災いの網に捕らえられる魚や、罠に捕らえられる鳥のように、人の子らも、突然降りかかる災いの時に捕らえられる。
9:13
私は日の下で、次のような知恵も見た。それは私には大きなものに思えた。
9:14
小さな町があり、そこに住む人はわずかだった。そこへ大王が攻めて来て包囲し、大きな攻城設備を築いた。
9:15
町には、貧しくても知恵ある人がいた。その人は知恵によって町を救った。だが、誰もその貧しい人を覚えていなかった。
9:16
そこで私は言った。「知恵は力に勝る。」それでも、貧しい人の知恵はさげすまれ、その言葉は聞かれない。
9:17
知恵ある人が静かに語る言葉は、愚かな者たちを治める人の叫びに勝る。
9:18
知恵は戦いの武器に勝る。だが、罪を犯すひとりの人が、多くの善いものを滅ぼす。
1012
第10章
10:1
死んだはえは、香料作りの香油を臭くし、腐らせる。ほんの少しの愚かさも、知恵と名誉より重くなる。
10:2
知恵ある人の心は右へ向き、愚かな人の心は左へ向く。
10:3
愚かな人は道を歩いているときでさえ分別を欠き、自分が愚かであることを誰にでも知らせる。
10:4
支配者があなたに怒っても、自分の持ち場を離れてはならない。穏やかさは大きな過ちを静めるからだ。
10:5
私は日の下で、支配者から出た間違いのような災いを見た。
10:6
愚かな者が多くの高い地位に就き、富む人が低い地位に座っている。
10:7
奴隷が馬に乗り、高官たちが奴隷のように地を歩くのを、私は見た。
10:8
穴を掘る人はその穴に落ち、石垣を破る人は蛇にかまれる。
10:9
石を切り出す人は石で傷つき、木を割る人は木によって危険にさらされる。
10:10
斧の刃が鈍っているのに研がなければ、余計な力が要る。知恵は物事を成功へ導く。
10:11
蛇使いが術をかける前に蛇がかみつくなら、巧みに舌を操っても役には立たない。
10:12
知恵ある人の口から出る言葉は好意を得るが、愚かな人の唇は自分自身をのみ込む。
10:13
その口の言葉は愚かさで始まり、最後には害をもたらす狂気となる。
10:14
愚かな人は言葉を増やす。これから何が起こるか、人には分からない。自分の後に起こることを、誰が告げられるだろう。
10:15
愚かな人は労苦に疲れ果てる。町へ行く道さえ知らないからだ。
10:16
国よ、あなたの王が未熟な若者で、高官たちが朝から宴を開くなら、災いだ。
10:17
国よ、あなたの王が高潔な家の出で、高官たちが酔うためではなく、力を得るために、ふさわしい時に食べるなら、幸いだ。
10:18
怠けていると梁は沈み、手をこまねいていると家は雨漏りする。
10:19
宴は笑うために開かれ、ぶどう酒は人生を喜ばせる。そして金はあらゆる必要に応える。
10:20
心の中でさえ王をのろってはならず、寝室の中でさえ富む人をのろってはならない。空の鳥がその声を運び、翼あるものがその言葉を告げるからだ。
1112
第11章
11:1
あなたのパンを水の上へ送り出せ。多くの日を経た後、それを見つけるだろう。
11:2
七人に、いや八人に取り分を分けよ。地上にどんな災いが起こるか、あなたには分からないからだ。
11:3
雲が雨で満ちれば、地に降り注ぐ。木が南に倒れても北に倒れても、倒れたその場所に横たわる。
11:4
風ばかり見ている人は種をまかず、雲ばかり見ている人は刈り取らない。
11:5
息がどの道を通るのか、母の胎内で骨がどのように形づくられるのか、あなたには分からない。それと同じように、すべてを行う神の業は分からない。
11:6
朝に種をまき、夕方にも手を休めてはならない。こちらとあちらのどちらが実るのか、あるいは両方ともよく実るのか、あなたには分からないからだ。
11:7
光は心地よく、太陽を見ることは目に喜ばしい。
11:8
人が何年生きても、そのすべてを喜べ。だが、長く続く闇の日々も覚えておけ。これから来るものは、すべてむなしい。
11:9
若者よ、若い日に喜べ。若い日々に心を楽しませよ。心が示す道を歩み、目に映るものを追い求めよ。ただし、それらすべてについて神があなたを裁くと知っておけ。
11:10
心から悩みを取り除き、体から災いを遠ざけよ。若さも青春も、すぐに過ぎるものだからだ。
1212
第12章
12:1
苦しい日々が来る前に、また「何の喜びもない」と言う年月が近づく前に、若い日のうちにあなたの創造者を覚えよ。
12:2
太陽と光、月と星が暗くなり、雨の後にまた雲が戻る前に。
12:3
家を守る者たちが震え、力ある男たちが腰を曲げ、ひき臼を回す女たちは数が減って仕事をやめ、窓から見る女たちの目が暗くなる日に。
12:4
通りに面した扉が閉ざされ、ひき臼の音が小さくなり、鳥の声で目を覚まし、歌う娘たちの声が弱くなる日に。
12:5
人は高い所を恐れ、道の上の危険におびえる。アーモンドの木は花を咲かせ、ばったは重い体を引きずり、食欲を促す実も効かなくなる。人は永遠の家へ向かい、嘆く人々が通りを歩き回る。
12:6
銀のひもが切れ、金の器が砕け、泉のそばで水がめが割れ、井戸の滑車が壊れる前に。
12:7
土は元のように大地へ帰り、息はそれを与えた神へ帰る。
12:8
なんとむなしいことか、とコヘレトは言う。すべてはむなしい。
12:9
コヘレトは知恵ある者であっただけでなく、民に知識を教え続けた。多くの格言をよく考え、調べ、整えた。
12:10
コヘレトは喜ばしい言葉を見つけ、真実の言葉をまっすぐに書こうと努めた。
12:11
知恵ある人々の言葉は、家畜を導く突き棒のようだ。集められた言葉は、しっかり打ち込まれた釘のようであり、ひとりの牧者から与えられた。
12:12
わが子よ、これらに加えて忠告しておく。本を作ることに終わりはなく、学びすぎれば体は疲れる。
12:13
すべてを聞いた今、結論はこうだ。神を畏れ、その戒めを守れ。それが人のすべてだからだ。
12:14
神は、隠されたことも含め、すべての業を裁かれる。それが善いことか悪いことかを問わずに。
